2013年4月22日月曜日

基礎から始めるアメコミ講座【1】



こんにちは!

皆さまはアメコミを読み始めた頃、その歴史の長さやキャラクターの多さ、設定の複雑さに圧倒されませんでしたか?

私も当初は何をどう把握すればいいのか? どこから手を出せばよいのか? など、分からないことだらけでした。

すべて分からなくても作品を楽しむことはできますが、知識が多いほうがより作品の奥深さを楽しめるというもの。そこで、ここでは「初めてアメコミを読んでみようと思う方」を対象に、アメコミの基礎知識をお伝えしていければと思います。


◆アメコミの定義
そもそもアメコミとはなんでしょう? もちろん、「アメリカン・コミックス」を略した言葉ですね。

そのまま広い意味で捉えると、言葉のとおり「アメリカで作られたコミックス」となり、実際にはスーパーヒーローが活躍する「ヒーローもの」だけでなく、そこに該当しない様々なジャンルの「オルタナティブ」コミックが存在します。

ただし、やはりアメコミというと、スーパーマンやバットマン、スパイダーマンらのヒーローたちを思い浮かべる方が多いだろうと思います。

そのため、このブログの中でアメコミといった場合には、狭義でのアメコミとして「ヒーローもの」コミックのことを指すことにいたします。(小社からは 「オルタナティブ」コミックも刊行していきますので、ご注目いただけますと幸いです)


◆アメコミの形
小社ではほぼ毎月のように翻訳コミックスを刊行していますが、それでも翻訳されている作品数はほんの一部。長年の間にアメリカで刊行された無数の作品の海の中では、大海の一滴といえます。

その本国アメリカで売られているアメコミで、最も一般的なのは、中綴じされた32ページのフルカラーの冊子の形。(日本では俗に「リーフ」と呼ばれているため、ここでもその呼び名を使います)
広告を抜かすとコミックの本編はおよそ22ページ前後で、それが主に月刊ペースで発行され、およそ1~3ドルほどで売られています。

そして、通常は一つのタイトル(一つのリーフ)に、一つの作品が連載されています。キャラクターやチームごとにタイトルが違うため、毎月たくさんのリーフが発売されているのです。

人気キャラクターになると、一人のキャラクターで複数のタイトルが発売されることも。その場合は、単純に違うエピソードを同時に連載していたり、作品の舞台となる時期が異なっていたり、作品自体がパラレルワールドの出来事だったりという違いがあります。

そして、連載されているたくさんのタイトルの中から、人気のあるエピソードを一冊にまとめられたのがTPB(トレード・ペーパー・バック)です。

日本でも雑誌で連載された作品を単行本(コミックス)にまとめて刊行しますので、似たようなものと考えていただければ分かり易いですね。

一つのエピソードが一冊にまとまっていることが多いので、物語をつかみやすいです。
そのため、基本的に邦訳アメコミはTPBを底本にすることが多いです。


◆アメコミの出版社
『スーパーマン』や『バットマン』を擁する「DCコミックス」、『スパイダーマン』や『アイアンマン』を擁する「マーベル・コミックス」。近年、どんどん作品の映画化が行なわれ、新たな市場を作り出しているこの2社が、アメコミ出版社の軸となります。

もちろんこの2社以外にも、『ヘルボーイ』を擁する「ダークホース・コミックス」、『スポーン』を擁する「イメージ・コミックス」など、個性豊かな出版社がアメコミを刊行しています。


◆アメコミの歴史の長さ
歴史については様々なところで語られていますので、今回は軽く触れる程度にいたします。

ヒーローものとしてのアメコミの歴史は、DCコミックスから1938年に刊行された「Action Comics」1号で発表された『スーパーマン』から始まりました。(余談ですが、2010年にこの号が競売にかけられ、約1億4千万円で落札されたそうです!)

そして、1939年には同じくDCコミックスから『バットマン』が誕生。この2人のスーパーヒーローはご存じのとおり、70年以上もの時を越えた現在でも、アメコミヒーローの代表としてあり続けています。
その後、様々なヒーローが生み出され、「ゴールデン・エイジ」と呼ばれる黄金期が幕を開けるのですが、それはまた別の機会に……。

一方のアメコミ出版社の雄、マーベル・コミックスがコミック出版を始めたのは1939年のことでした。
現在は日本人にとってもアベンジャーズの一員としてなじみのある『キャプテン・アメリカ』もこの時代に生まれています。

その後、紆余曲折を経て1961年に発表された『ファンタスティック・フォー』から、現在に至るマーベルの世界観が形づくられていきます。翌年1962年には『スパイダーマン』や『ハルク』、1963年には『アイアンマン』や『X-MEN』など、現在でも映画をはじめ様々なメディアでおなじみのヒーローたちが続々とデビューしていくことになりました。

上記のように、スーパーマンは誕生から75年、バットマンは74年、スパイダーマンは51年、アイアンマンは50年もの間、愛され続け、描かれ続けてきたキャラクターなのです(2013年現在)。

長い時間の中で様々な変化を遂げてきた彼らのすべてを掴むことは容易ではありません。


◆アメコミ初心者おすすめタイトル
アメコミ出版社の側も、ただ継続していくだけでは新しい読者を掴むことが難しいということは充分承知されています。そのため、時に誕生エピソードやキャラクターを再設定することで物語を仕切り直したり、別世界(パラレルワールド)の世界を描くことで、新しい読者でも分かりやすく楽しめるような工夫がなされています。

小社で刊行されている中から特にアメコミ初心者におすすめのタイトルをご紹介して、今回の締めとさせていただきます。
ジェフ・ジョーンズ[作]
ジム・リー[画]
定価:本体2,000円+税

「ジャスティス・リーグ」とは、スーパーマンやバットマンなどDCコミックスを代表するスーパーヒーローたちが結成したヒーローチームのことです。

これは、DCコミックスの世界が大きく再設定(リランチ)されたため、この作品の中でヒーローたちが出会い、チームを組むという“第一話”の物語です。ストーリーも分かりやすいため、アメコミの知識ゼロでも楽しめる作品です。

ダン・スロット他[作]
フィル・ヒメネス他[画]
定価:本体2,100円+税

前号のとある出来事によって、長年続いたスパイダーマンの世界観がリセットされてしまうという事件が起きました。積み重なった複雑な設定を気にせずに読めるため、コミックのスパイダーマンを初めて読む方には最適の一冊です。

現在の状況設定やスパイダーマンの物語全体についての手引きも掲載されています。(小社から『スパイダーマン:ブランニュー・デイ』シリーズ3巻まで好評発売中です!)


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(文責:佐藤学)


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