2013年6月3日月曜日

基礎から始めるアメコミ講座【3】

こんにちは!

前回に引き続き、「基礎から始めるアメコミ講座【3】」をお送りします。

このブログ、ページビューのほとんどは当然日本からなのですが、意外にもアメリカやフィリピン、ロシアなどからも見ていただいているようですね。ありがとうございます!

それでは、今回は「アメコミは誰のものか?」をテーマにしたいと思います。


◆日本のマンガの権利者
アメコミの権利、つまりは著作権を持っている者は誰なのでしょうか? それを知る前に、まず日本のマンガの事情を知ると違いが分かりやすくなります。

日本のマンガの場合は、著作権は著者=マンガ家さんが持っています。また、例えばそのマンガに原作者がいる場合には、原作者も著者の一人であり、著作権を持っている権利者となります。そのように、著者が複数人いる場合には、基本的にその全員が著作権者になります。

さて、「著作権を持っている」というのは、どういうことでしょうか?

例えば、ある作品を映画化やドラマ化したいとか、作品に出てくるキャラクターのグッズを作りたいとか、人気があるので続編や番外編を作りたいとか、そうした作品に関わるすべてのことを、著作権者の了解なしに行うことはできません。つまり、著作権を持ってる著作権者のみが、作品に関わる物事を決定することができるわけです。当然、それ以外の者が、自分が著作権を持っていない作品の続編や番外編を勝手に作ることはできません。

では一方で、出版社はどんな立場なのでしょうか?

その作品を発売した出版社が持っているのは、「出版権」という権利です。これは文字どおり「その作品を出版することができる権利」であり、著作権とは違います。例えば編集者という立場で作品と深く関わっていたとしても、出版社は著者ではないので、著作権は持っていません。時に、出版社が主体となって作品の映画化やドラマ化、キャラクターグッズの作成などを行っているように思われる場合があるかもしれませんが、前提として、あくまで著作権者=著者の了解を得たうえで、作業を委託されて行っているというわけです。


◆アメコミの権利者
ところがアメコミの場合、事情はまったく違います。アメコミの作品やキャラクターの権利は、基本的にその作品を刊行する出版社が持っています。

出版社が著作権者なのです(出版社によって例外もあります。それについては、また別の機会に!)。そのため、ある作品を映画化やドラマ化したいとか、作品に出てくるキャラクターのグッズを作りたいとか、人気があるので続編や番外編を作りたいということが、出版社の権利として実行することができるというわけです。

ここで特に重要なのは、出版社が自由に続編や番外編を作れるということだと私は思います。以前、「基礎から始めるアメコミ講座【1】」で書いた、「アメコミの歴史の長さ」の秘密がここにあるのです。

著者が著作権を持っている日本のマンガのストーリーは、色々な事情でその著者が作品を描かなくなった時点でほとんどがストップしてしまいます。なかには他の著者に引き継がれ、描かれ続けていく作品も存在しますが、マンガ界全体から見るとかなり例外的といえます。作品自体は重版や再販などもされていきますが、著者以外の手で続きが作られていくことはほとんどありません。

しかし、アメコミの場合には、出版社が続きを出そうとする限り、同じキャラクターの作品を永遠に出し続けることができます。いつでも、その時代のライターが、その時代の読者を楽しませるためのストーリーを練り上げ、その時代のペンシラーやアーティストたちが、その時代の読者を魅了する最高のアートを描く。そうすることで、アメコミのキャラクターたちは、日本のマンガでは考えられないほど長い期間にわたって、描き続けられてきたのです。


さて、ここで話題に上げるのは2回目となりますが、そのアメコミの歴史の先頭に立つのは“スーパーマン”です。1938年に生まれたスーパーヒーローは、世界のほとんど誰もが知るキャラクターとなり、今年で誕生から75周年を迎えました。

読者によって好きなキャラクターや物語はそれぞれだと思いますが、アメコミを読んでいく上では、やはりスーパーマンの作品を外すわけにはいきません。しかし、75年という長い歴史(2013年現在)のなかでは、様々なライターが様々なストーリーを書き、スーパーマンも様々な変遷をたどっていきました。その中から、「どの作品を読んだらいいのかわからない」という方も多いだろうと思います。

実は、そんな読者の皆さまにちょうどぴったりの作品を、先日たまたま(笑)小社より刊行いたしました。編集を担当した者として、本音で紹介させていただきます。少しでも気になったことがありましたら、ぜひお買い求めください。きっと気に入っていただけるはずです!
『スーパーマン・フォー・オールシーズン』
ジェフ・ローブ[作]/ティム・セイル[画]
◆市場在庫のみ(2016年現在)◆
スーパーマンを語るためには、これを読まねば始まらない。若き日のクラーク・ケント/スーパーマンの成長を描いた感動作! このカバーのイラストを見て、「絵がかっこよくないな……」と第一印象で感じられた方がいらっしゃるかもしれません。そういった方は、おそらく中身の本編を見ても、同じ印象だと思います。なぜ、こんなことをわざわざ書くのかというと、私自身の第一印象がそうだったからです。

誤解しないでいただきたいのは、作画を担当したティム・セイルは素晴らしいアーティストであるということです。彼は名ライターのジェフ・ローブとたびたびコンビを組む実力派であり、弊社でも彼らがコンビを組んだ別の作品『キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ』を刊行しています。

『キャットウーマン~』については、アートも本当に魅力的に感じ、この作品で私はキャットウーマンが大好きになりました。ただ、ティム・セイルの絵は作品によって印象が変わることも多く、本作のアートに関しては、私は上記のような印象を持ちました。

しかし、内容を把握しながら本書を読んだ時、印象が一気に変わりました。
微妙かも……と思っていたアートの方向性が気にならなくなっていたのです。本書は、スーパーマンの正体であるクラーク・ケントが、スーパーマンとしての活動を始めたばかりの初期のエピソードを描いた作品です。中心となるのは、人知を超えたスーパーヒーローの活躍ではなく、一人の“人間”の成長です。普通の人間と同じように悩み、迷いながら進んでいくクラークの姿は共感性に満ちており、特に彼を立派に育て上げた義両親との関係には、心を震わせる素敵さがあります。

また、故郷の田舎町でともに育った幼馴染の少女、ラナ・ラングとの淡い恋もとても魅力的に描かれています。どこか牧歌的で郷愁をさそうような作品ですが、同時にエンターテインメントとしての側面もしっかりと持っている作品です。読み終えると、ストーリーとアートが絶妙にマッチして、作品の魅力となっていることに気づきました。そしてきっと、この作品を読めば、75年もの間スーパーマンが愛され続けてきた秘密の、その根っこの部分が分かるのではないかと思います。「アメコミっていいな」って、しみじみと思わせてくれる作品です。ぜひ第一印象を超えて手にとってくださる方が増えてくれたらと願っています。


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(文責:佐藤学)