2017年10月3日火曜日

雷神ソーが親父に勘当された!? そのオリジンは、家族の物語。

「アメコミ魂」読者のみなさん、こんにちは!

吹く風に秋の気配が漂い、ずいぶんと過ごしやすくなってきましたね。でも、編集部は今日もアツいアメコミをガンガン制作しています!

さて、今回ご紹介するタイトルは、今月18日ごろに発売となる『マイティ・ソー:シーズンワン』です。アベンジャーズの一員としても活躍するキャラクターのその誕生秘話に迫る物語となっています。登場人物たちの心の機微を味わっていただきたい、この季節におすすめの作品です。


●表紙
『マイティ・ソー:シーズンワン』
ライラ・スタージェス[作]
ペペ・ララス[画]
定価:本体2,000円+税
●10月18日頃発売予定●


映画第3弾がもうすぐ公開!
マイティ・ソーについては、映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』が11月3日に公開される予定ですので、もうすでにあちこちで宣伝映像を目にしている方も多いのではないでしょうか。この映画は、2011年公開の『マイティ・ソー』、2013年公開の『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』に続いて、シリーズ第3弾となります。ここまでシリーズ化されているという点で、ソーがいかに魅力的で、多くのファンがいるのか、ということがうかがいしれます。
彼は映画『アベンジャーズ』にも登場していますので、ソーを「コミックで読んだことがない」という方でも、映画で「このキャラクターを初めて知った」、「このイケメンにハマッた!」という方も多いようです。

しかも、この映画の予告編では、今年1月に公開された『ドクター・ストレンジ』の主人公がソーと対面する場面もあり、ファンにとっては「この二人が会話している…!」と話題にもなっているようです。

この映画のあらすじは、
ソーの前に<死の女神・ヘラ>が現れた。彼女は、ソーの究極の武器・ムジョルニアをいとも簡単に破壊すると、彼の国へ攻撃を始める。ヘラの復讐と野望を知ったソーは、この最強の敵を倒すために盟友ハルク、宿敵ロキらと型破りのチームを組み極限バトルに挑む。果たして、ソーたちは史上最強の敵からこの世界を守ることができるのか?

この映画ではハルクも登場するので、このキャラクターに興味を持たれたら、本書と同じ時期に発売となる『ハルク:グレイ』もぜひあわせて読んでみてください。

●表紙
『ハルク:グレイ』
ジェフ・ローブ[作]
ティム・セイル[画]
定価:本体2,200円+税
●10月18日頃発売予定●


「シーズンワン」シリーズは、とにかく読みやすい!
映画第1弾の『マイティ・ソー』では、彼が地球へと追放される様子が描かれますが、今回ご紹介するタイトル『マイティ・ソー:シーズンワン』もまさに同様の内容が展開します。
 
今では人気も高まりつつあるソーですが、もともと彼は神様なのに「オレ様」な態度が目に付く傲慢な性格。そんな身勝手で未熟な神様が、多くの試練を経ることで、「マイティ(偉大な)・ソー」へと成長していきます。まさしく本当のヒーローになる前の秘話が明らかになるというストーリーなのです。
 
本書のタイトルにあるとおり、「シーズンワン」シリーズは、近年の映画でマーベルヒーローの魅力を知った新しいファンに向けて、そのオリジンを新たに書き起こした読み切りのコミックです。「気鋭の作家たちが新時代の読者のために作り出したストーリーは、主に60年代に書かれたオリジナル作品を現代風にアレンジしたもの」(翻訳者・光岡三ツ子さんによる本書解説より)で、半世紀以上前に誕生したこのキャラクターですが、もっと身近に感じることができます。

このシリーズは、すでに弊社から『アベンジャーズ:シーズンワン』『ドクター・ストレンジ:シーズンワン』『X-MEN:シーズンワン』『アントマン:シーズンワン』『ウルヴァリン:シーズンワン』を刊行しています。お気に入りのキャラクターのオリジンを知りたい方は、ぜひこれらを読んでみてください。誕生秘話を知ることで、そのキャラクターの個性や能力についてもっと深く理解できるようになるはずです。
アメコミといえば、膨大なキャラクターとそれぞれの長い歴史。どこから読み始めればよいのか、つい迷ってしまいですが、上記のようなコンセプトのもと、あくまでもわかりやすいストーリー展開と人気キャラクターの初期エピソードで構成されているおかげで、アメコミ初心者には特にオススメできる一冊です!

神様なのに「オレ様」な態度に、怒りの鉄槌
さて、本書ではソーのオリジンに様々な解釈が加えられているので、ソーをよく知る方でも新たな物語として楽しむことができます。

以下、本書紹介文より引用。
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神々の国アスガルド。この国の若き王子ソーは最も強い神として知られていたが、同時に傲慢で軽はずみな性格でもあった。巨人やトロールをなぎ倒し、その武勇を誇っていた栄光の日々は、嫉妬にかられた義弟ロキの陰謀により突然終わる。彼は、父王オーディンによって地球に追放され足の不自由な医師に転生させられてしまった!
果たして、彼は本来のパワーに目覚め、真の自分の姿を取り戻すことができるのか!?
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このストーリーで重要なのは、やはりソーと弟のロキ。あらためて、この二人の経歴や能力について紹介します。

【ソー】
●名前の由来
コミックでの初登場は『ジャーニー・イントゥ・ミステリー』♯83(66年)なので、なんと50年以上も前。北欧神話での同名の神Thor(トール)をベースにしていて、「ソー」はこのトールの英語読みです。

●高い身体能力と傲慢さ
アスガルド最強とまで謳われるほど怪力を誇り、マーベル最強の怪力の持ち主とも言われるハルクと双璧をなすほど。
しかし、その強大さゆえに傲慢に増長し、事あるごとに横柄な態度をとるようになってしまいます。それを見かねた父オーディンは息子が謙遜を覚える必要があると悟り、人間へと転生させるのです。

本書でも次のような態度やセリフで、傲慢さ全開。周囲のみんなを困らせてしまいます。

・敵国ヨトゥンヘイムへ侵入するや、
「ロキよ、俺たちは他の種族と違う。安全にしがみつくことはしない!」

・氷の巨人の攻撃を受けると、
「粗末な構えだな! お前の剣術の先生のツラが見たいものだ」

・父オーディンに武器使用を禁止されると、
「止めてみろ、老害め」

・倒れ込んだ敵を見下ろしながら、
「このソーを殺すだと? できるならやってみるがいい」

●プライドがとにかく高い
つまり、「できる」人ゆえに、とにかくプライドが高くて、回りの人に迷惑をかけまくる困った人物なのです。

本書でも、石人に「何者ダ?」と聞かれると、

「俺は雨の声、風の心なり」
「人呼んで“雷を運ぶ者”…」
「稲妻の詩人!」
「アース神族の王子」
「神々の父、オーディンの息子!」
などと、バトルの最中に様々に形容して自己紹介する姿は自己陶酔の極み! アメコミの他のキャラクターを見渡しても、ここまで「オレって、すごい!」さんは見つかりません…。


【ロキ】
●敵の王に拾われる
年中雪が降る凍てついた国ヨトゥンヘイムは、ソーの国アスガルドと長年対立していました。ある時、ヨトゥン王ラウフェイとオーディンの間に戦争が起こり、オーディンが勝利しました。その戦場で打ち捨てられていたラウフェイの息子が幼いロキでした。オーディンは慈悲心から連れ帰り、愛息子ソーの弟として育てたのです。

●ソーとの関係で屈折
カリスマ性があって肉体も強靭。自信に満ち溢れた兄に対して、弟として憧れの気持ちと憎しみも持つ。この屈折した性格こそが、じつは『マイティ・ソー』の物語に深みを与えています。

●邪悪で狡猾な性格
ロキもソーと同じく北欧神話に登場する神で、その名前は「終わらせる者」などの意味があります。美しい顔を持っていながら、邪悪な気質で移り気な性格。狡猾さでは誰にも負けず、よく嘘をつきます。『マイティ・ソー』に登場するロキは、いつもこのようなキャラクターです。


神様だけど、親父に勘当された!?
本書が他の作品と大きく違うのは、強敵との戦いや宿敵への復讐といった争いが主眼となっていないこと。乱暴に言ってしまうと、「アメコミっぽくない」物語が展開するのです。

この物語は、ソーが父のオーディンによって地球へ追放されてしまうことで動き始めます。
要は、親父に勘当された息子の話なのです。その息子が何を経験することで、考え方にどのような変化が生じるのか。いつかは親の元に戻るのか。映画でも小説でも、これまでに幾度となく描かれてきた、若き青年の成長物語の変奏と言えます。

父と兄、弟。男たち、そして家族の物語
息子の未熟さを心配するがゆえに、厳しい対応をする父。その父に「なぜ、分からない!」と反発しながらも、「そんな自分も認めてほしい」と甘える子ども。ジェームス・ディーン主演の映画『エデンの東』にもよく似たキャラクターの構図で、いつの時代にも通じる普遍的なテーマが明確に込められています。

同時に、兄との比較で屈折していった弟。「兄だけじゃなく、僕も見て!」という強い願いと不満。その兄弟にしか分からない愛憎が、本書では悲劇の連鎖を生み出していきます。そんな弟を兄は「かわいいがあまり、逆にどうしても許せない!」と思ってしまうあたりがなんとも切なく、胸に迫ります。

そして、ソーの親友にして忠臣でもあるウォリアーズ・スリーの存在も大きい。キャッキャと一緒に遊び回る友達であり、いざという時には連携してピンチを切り抜けるという仲間は、未熟なソーにとって大切なよすがとなっています。

このように見ると、スーパーヒーローが主人公なのに、物語はどこにでもあるような家族のできごとで、男同士の関係も丁寧に描き出したファミリードラマなのです。

さて、ソーと言えば、本書に引き続き、11月上旬には『アストニッシング・ソー』を刊行する予定です。こちらはうって変わって、ソーが宇宙で活躍する壮大なストーリーとなっていますので、あわせて読めば彼の魅力を存分に味わうことができます。

●原書イメージ
『アストニッシング・ソー』
ロバート・ロディ[作]
マイク・チョイ[画]
定価:本体2,000円+税
●11月8日頃発売予定●



コミックも映画も、どんどん広がるマイティ・ソーの世界。そのオリジンを今のうちに押さえておいてはいかがでしょうか。

それでは、また来週お会いしましょう。
(文責:木川)