2017年8月8日火曜日

これがワンダーウーマンの“ベリーベスト”な“名バトル”!



「アメコミ魂」読者のみなさん、こんにちは!

夏まっさかりですね。うだる暑さが続く毎日ですが、編集部は今日もみんなで元気にアメコミを制作しております。

「暑さ」と言えば、それを吹き飛ばすようなワンダーウーマン旋風がいまアメリカからやって来ています。TVで、駅で、書店で……。街を歩けばいたるところで映画『ワンダーウーマン』の告知を目にするので、「ワンダーウーマンってだれ?」と言っていたアメコミ初心者でも、もうすでに彼女の名前ぐらいは覚えた方も多いのではないでしょうか。

さて今回ご紹介するのは、先週発売したばかりのワンダーウーマンの新作『ワンダーウーマン:ベストバウト』です。これまでのワンダーウーマン・ファンはもちろん、「ワンダーウーマンって知ったのはほんの最近だよ」、「映画はぜひ見に行きたい!」というワンダーウーマン初心者にこそぜひ読んでいただきたい作品です。

『ワンダーウーマン:ベストバウト』
ジョージ・ペレス、ジョン・バーン他[作・画]
定価:本体1,800円+税
●好評発売中●


初登場は76年前!


そもそもワンダーウーマンがコミックで華々しいデビューを飾ったのは、1941年。

もう76年も前のことで、それだけ長く愛されてきたキャラクターであり、アメコミ人気を牽引してきた重要な存在です。


ワンダーウーマン旋風がやって来た


だからこそ、アメリカ本国では彼女の映画化を「今か今か」と長年待ち望んできたわけで、今年公開されるやいなや大変なヒットとなったのです。

他のアメコミ映画と比較すると、『ドクター・ストレンジ』、『ローガン』、『アイアンマン』、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を超えるオープニング成績を達成する熱狂ぶり。

しかも、ジェシカ・チャスティンなどのハリウッド女優やTV番組の女王オプラ・ウィンフリーなど多くのセレブがこぞってコスプレ姿などをSNSにアップ、「I LOVE WONDER WOMAN!」を競って発信しています。

ちなみに映画は、あの『美女と野獣』や『ラ・ラ・ランド』を超えて、2017年ツイートされた映画No.1のようで、それだけ多くの方々が話題にしたようです。

7月11日には映画の大ヒットを受けて、あのマーベルのキャラクターであるデッドプールがワンダーウーマンを祝福するツイートをアップ。両手でハートマークを作ってかわいらしい画像が話題を呼んでいます。

このように、アメリカの人々にとっては、このキャラクターがいかに特別なのか、親しみを覚えているのか、とてもよく分かるエピソードが次々に出てきています。


どんなヒーローなのか


では、このワンダーウーマンとはいったいどんなヒーローなのか。
ご存知の方も多いと思いますが、いま一度紹介します。

本名はダイアナ。セミッシラ(またはパラダイス島)に住む、女性のみからなる超種族アマゾン族の女王ヒッポリタの娘。外界から閉ざされていた島に住んでいたが、陸軍パイロットのスティーブ・トレバーが不時着したことで、初めてシニカルな現代社会に足を踏み入れることとなる。

特殊能力としては、怪力、飛行能力、格闘術、格闘戦術、俊敏性で、その輪にかかった者に真実を話させる真実の投げ縄、弾丸を跳ね返す腕輪、ブーメランになるティアラを武器として使用する。


コミックス史上最高のヒロイン

登場から70年以上、様々な雑誌の表紙を飾り、フィギュアが作られ、Tシャツなどファッションにも採用され、これほど広く露出したヒロインは他にいないのではないでしょうか。

美貌と頭脳、腕力を兼ね備えることで、フェミニズムのアイコンとして親しまれてきたことが、その一番の理由かもしれません。


歴代の名バトルばかり6話を編集


この『ワンダーウーマン:ベストバウト』は、このヒーローをよく知るファンはもちろん、初めての方にも読みやすい「ワンダーウーマン入門編」とも言える一冊です。

内容はタイトルどおり、これまでの彼女の戦い、特に印象的なバトルとされる6つのストーリーを集めた「ベスト」版のおもむき。音楽のベスト版CDと同じく、どこを読んでも彼女のすごさ、魅力が詰め込まれたエピソードに出会えて、面白さ満載なのです。ハズレなし、どこから読んでも分かりやすく、この一冊で6つの味が楽しめるようなお得感のある仕上がりになっています。

戦う相手も神や怪物、ヴィランに心を操られた友人などバラエティに富み、ファイトスタイルも異なれば登場する武器も多彩。作品を手がけるのはエピソードごとにすべて異なるスター作家と呼ばれるアーティストたちで、様々なテイストのワンダーウーマンを楽しむことができるのも魅力です。

では、ここで各エピソードについて、あらすじや死闘を交わす敵、見どころを紹介します。気になったエピソードからページをめくってもすんなりと読み進められるので、初心者でもまったく構える必要はありません。


第1話 「集中攻撃」
●あらすじ●
ダイアナは神々から世界征服を企む軍神アレスを止める命を受けて、「男の世界」に旅立つ。アレスの目的が「第三次世界大戦」を引き起こすことにあると知った彼女は、アレスの娘ハルモニアから入手した護符に導かれて、敵の手に落ちたアメリカのミサイル基地にたどり着く。
●敵●
オリンポスの軍神アレス。ゼウスの息子の一人だが、他の神々を目の敵にしている。
●見どころ●
軍神アレスが放つ沸き立つ炎の中で、苦悶するワンダーウーマン。


第2話 「密林の夜」
●あらすじ●
ゲートウェイシティに拠点を移したダイアナは博物館で働きながら、いろいろな敵と戦っていた。そんなある日、友人マイク・ショアが失踪したとの知らせを受けて、彼女は捜索を始める。事件の背後に宿敵チーターの存在を感じた彼女は、動物園の跡地へ向かうと…。
●敵●
宿敵チーター。元考古学者だが、植物神によって力と野獣の姿を得る。
●見どころ●
敵の攻撃に対して、あえて無抵抗となり、その思いを受け止めるワンダーウーマン。


第3話 「石化の魔眼」
●あらすじ●
魔女サーシが妖女メデューサをよみがえらせて、ダイアナのもとに送り込む。大使館職員の息子を石に変えたメデューサにとどめを刺そうとするダイアナだが、メデューサは軍神アレスを召喚して、神の名のもとに正式な決闘を挑む。
●敵●
目を合わせた者を石に変えるメデューサ。ゴルゴーン3姉妹の末妹。
●見どころ●
敵の姿を見て石と化さないで済むように、ワンダーウーマンがとる驚きの行動。


第4話 「犠牲」

●あらすじ●
ジャスティス・リーグを再建させたマックス・ロード。その魔の手が他のヒーローにおよぶ可能性を恐れたスーパーマンは地球へと向かう。後を追って、ダイアナもマックスがいるとおぼしきスイスへ急行すると…。
●敵●
スーパーマン、マックス・ロード
●見どころ●
地球と宇宙の区別なく繰り広げられる、スーパーマンとの高速かつ大規模なバトル。


第5話 「邪悪の申し子たち」
●あらすじ●
市民の暴動が起き、混乱状態に陥ったワシントンDC。事件の背後には、不気味な5人の少年の暗躍があった。ダイアナも現場へ駆けつけるが、そこに現れたパワーガールもどこか様子がおかしかった…。
●敵1●
パワーガール。別次元のスーパーマンのいとこで、彼と同様の能力を持つ。
●敵2●
軍神アレスの5人の子どもクロウズ。アレスが魔法によって、アマゾン族の女性に産ませた。
●見どころ●
パワーガールとの美しい女性どうしによる、激しい肉弾戦。


第6話 「神々の戦い」
●あらすじ●
ダイアナはゼウスの子どもを身ごもったゾラという人間の女性を守ることになる。様々な神がゾラとその子どもを狙うが、最大の敵がファーストボーンだった。ロンドンを陥落させたファーストボーンに対して彼女は完全と立ち向かう。
●敵●
ファーストボーン。ゼウスとヘラの知られざる第一子だが、ゼウスに忌むべき存在として放逐された。
●見どころ●
敵への憎しみのあまり、我を失い、狂気のままに戦うワンダーウーマンの姿。


何十年も変わらないヒーロー像


個人的には、タイトルがどれもとてもいいなと思うのです。
小説家でも、「題がいい」ということが大作家の証、などとも言われますが、古典文学のような格調高さがあって、展開するストーリーに想像を膨らますことができます。

また、この6編はすべて同年代の作品ではなく、1980年代から2010年代までのそれぞれの年代からピックアップされています。この30年間のワンダーウーマンの歴史であり、その歴戦の集大成とも言える作品に仕上がっています。

だから、よくよく読めば、確かにその時代の社会情勢を感じる作品もあれば、逆に時代が変わってもこのヒーロー像だけは変わらない、とキャラクターのコンセプトに一本筋の通ったところも感じることもでき、キャラクターに込めた作り手の一貫した熱いこだわりが脈々と流れているように思うのです。


ワンダーウーマンの真の魅力が見えてくる


ワンダーウーマンを形容する際に多く使われるのは、「美しさ」と「強さ」。確かにそのとおりです。しかし、この6つのエピソードをまとめて読むと、その下に隠れていたもう一つの彼女の魅力が浮かび上がってきます。

それは、やさしさとも言えるし、思いやり、もっと大げさに表現すると「慈悲」とも言えます。それは助ける人物に対してはもちろん、戦っている相手にさえ時にはその感情を持ってぶつかっていくのです。怒りや憎しみ、復讐の心にまかせて相手を打ち負かそうとするだけではないのです。相手の攻撃に対して無抵抗のまま受け続け満身創痍になったり、あるいは涙を流したり、そんな姿はまさにその象徴ではないでしょうか。

これこそが、他の男性キャラクターにはない特徴で、魅力であり、彼女が多くの方から長く愛されてきた理由の一つでしょう。


驚きの壮絶シーンを見逃さないで


本書で、絶対に見逃さないでほしい1場面、いえ1コマがあります。それは強敵ファーストボーンとの戦いのさなかに起こります。ワンダーウーマンを知っていればいるほど、このシーンはショックです。

初見で私ははっと息をのんだほど。彼女のとった行動があまりにも突拍子もなく、そして恐ろしく、でもそれ以外にはないと思えるほど理にかなっています。ですが、読者の多くはやはり納得しつつも強い衝撃を受けてしまうのではないでしょうか。

見てのお楽しみですが、「彼女が、そ、そんなことを…?」という事態なのです。


今月末には次回作も発売!


このワンダーウーマンについてもっと知っていただきたいとの思いから、23日ごろに新作『ワンダーウーマン:ザ・ライズ』の発売も予定しています。

『ワンダーウーマン:ザ・ライズ』
グレッグ・ルッカ[作]
リアム・シャープ[画]
定価:本体2,300円+税

▼あらすじ▼

ワンダーウーマンに衝撃的な出来事が起こる。アマゾン族の故郷である神秘の島、セミッシラに帰れなくなってしまったのだ。島に帰る方法をただ一人知るのは、凶暴な半獣の女性、チーターだ。宿敵であるチーターと手を組むことで、彼女は再び故郷の地を踏むことができるだろうか…。


今後ますます注目されていくこの史上最高の女性ヒーロー。他のヒーローにはない独特の魅力にぜひ触れてみてください。

それでは、また来週お会いしましょう。

(文責:木川)


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