2017年2月21日火曜日

バットマン史上最大の物語「ノーマンズ・ランド」第3巻!

 アメコミ魂をご覧の皆さま、こんにちは!

 先週15日、バットマン史上最大のエピソード「バットマン:ノーマンズ・ランド」の第3巻が刊行されました! 前巻の刊行からおおよそ2年弱。紆余曲折を経て、ようやっと刊行することができました。これもひとえに、続編の刊行を待ち望んでくださった方々のおかけです!

バットマン:ノーマンズ・ランド3
ジャネット:ハーヴェイ他[作]
セルジオ・キャリエロ他[画]
定価:本体4,000円+税
◆好評発売中!◆



 本書は、1999年からおおよそ1年間にわたって展開された一大クロスオーバー「ノーマンズ・ランド」に、「アズラエル」や「ナイトウィング」、「ロビン」などの周辺エピソードを追加して2011年に刊行された〝完全版〟の第3巻です。


第1巻、第2巻の紹介記事はこちら↓
伝説の一大巨編『バットマン:ノーマンズ・ランド』始動
米DC映像展開まとめと『ノーマンズ・ランド2』!


 ゴッサムシティがアメリカ本土から隔離されるという衝撃の設定でスタートした本シリーズも、いよいよ折り返し地点を過ぎて後半戦に突入。長大な物語(総ページ数2100ページ超!)にも関わらず、決してダレることなくテンションを保ち続けていることは、さすがのひとことです。これはひとえに、脚本陣による巧みなストーリー作りと、シリーズ編集者による計算された構成の賜物といえるでしょう。
 極限状況下に置かれた人間の決断、行動を描いてきた本シリーズ。第3巻では、ヒーロー、ヴィランたちはもちろん、市井の人々の物語も描き出します。その代表的なエピソードを、いくつかご紹介しましょう。



第1話『ザ・キング』
 汚水の濾過装置や風力発電、病原菌や害虫の駆除などの知識や技術によって、困窮している市民を救った謎の男〝キング〟。彼が行方不明になり、その捜索を依頼されたバットマンは、やがて意外な人物へとたどり着く。
 ゴッサムで生まれ育ち、たとえ瓦礫の山と化してもこの街と供に生きることを決意した男の想いが胸を打つエピソード。特殊能力や卓抜した戦闘力がなくても、人はヒーローになり得るということを伝えてくれます。




   
第8~9話『光の当たらない場所で』『ヒーローの条件』
 霊龍団と聖天拳会、2つのギャング団が対立するチャイナタウン。霊龍団の女首領リンクスは、不法移民たちに不当な過重労働を強いる聖天拳会に戦いを挑むが、バットマンの協力を得てもなお、苦戦を余儀なくされる。
 権力者に抑圧された民衆が、やがて蜂起に至るまでの過程。そこにはあまりにも悲しく尊い犠牲が払われることになります。




第12~13話『地下鉄道 第1章/第2章』
 ボック、通称〝ハードバック〟。自警団を組織して、5丁目から15丁目の100ブロックを守る元警官。彼は、未来ある子供たちをゴッサムから逃がすため、ペンギンに危険な賭けを持ちかける。
 自らを犠牲に利他的な行動を取る男、そして悪党として忌み嫌われる人物の意外な人間性の発露。犯罪がはびこるゴッサムシティに住む人々の、様々な想いやドラマが描かれます。




 これら市井の人々を中心としたエピソードの他にも、本書ではバットマンの歴代ヴィランのビッグネームであるジョーカー、ベイン、トゥーフェイスのエピソードも収録されています。秩序が失われたゴッサムシティで自由を謳歌するジョーカー。法への復讐とゴッサムの完全なる壊滅を目指すベイン。そして、その背後に見え隠れする黒幕の存在など、最終巻に向けて物語はますます加速します。

第10話 『コード 第1章:違法行為』より



 ヒーロー、ヴィラン、一般市民、それらの垣根を取り払い、極限状況下に置かれた人々を描くことで、単純な勧善懲悪のストーリーに陥らず、正義の意味や人間の尊厳といった深淵なテーマを浮かび上がらせた本シリーズ。皆さんもご存じの通り、本シリーズは、2012年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の映画『ダークナイト ライジング』の底本のひとつに選ばれています。現在のバットマンのイメージを確立した作品の一つですので、ぜひシリーズを通して読んでいただきたい作品です。 次巻はいよいよ最終巻。アメコミ史上に残る、サーガと呼ぶに相応しい大河ドラマを、ぜひお手に取って楽しんでください。
 また、普段はアメコミを読まないけど、映画「ダークナイト三部作」は好きという方にもオススメです。映画のインスピレーションの源泉になった本シリーズをお読みになれば、きっとアメコミの奥深い魅力を感じることができるはずです。

 それでは今週はこの辺で。また来週火曜日にお会いしましょう。


(文責:山口大介)




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