2016年2月29日月曜日

ちょっとアメコミ以外の海外コミックのお話を……

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!

“アメコミ”を冠に謳っている当ブログですが、今回はちょっと目先を変えて海外コミック全般のお話をしてみたいと思います。アメコミと並ぶ海外コミックの一大ジャンルというと、ベルギー、フランスを中心とした地域の「バンド・デシネ」(BD)が、まず挙げられます。

ベルギー出身の作家エルジュの『タンタンの冒険』が古典的作品としてつとに名高く、2011年にはスティーブン・スピルバーグの手によって3DCGアニメとして映画化されました。他にもエンキ・ビラルメビウスといった作家たちは、世界的に影響を与えています。とくにメビウスは、大友克洋に多大な影響を与えていることもあり、ここ日本においても高い知名度を誇っています。

ShoPro Booksでも、鬼才映画監督アレハンドロ・ホドロフスキー&フアン・ヒメネスのSF大作メタ・バロンの一族(上)メタ・バロンの一族(下)、フランソワ・スクイテンのラ・ドゥース、バンド・デシネ界でも指折りのカルト作家フィリップ・デュリュイエのローン・スローン、2012年に文化庁メディア芸術祭のマンガ部門で大賞を受賞した『闇の国々』など複数のタイトルを刊行しています。

闇の国々
ブノワ・ペータース[作]
フランソワ・スクイテン[画]
定価:4,000円+税
絶賛発売中
脚本、作画、彩色などの分業システムが確立しているアメコミに対して、バンド・デシネは強い作家性が大きな特徴といえます。日本の漫画のように、作家がアシスタントを雇って背景の作画などを分業するシステムとも違い、すべての工程を作家1人でこなすことも少なくありません。そのため、1つの作品を描き上げるのに数年かかることもざら。フランスでは「9番目の芸術」とも呼ばれ、美術批評の対象にもなっています。

日本やアメリカでは日常的な娯楽として価格も手に取りやすく設定されているコミックですが、フランス、ベルギーでは上記のような事情から、プレゼントとしての需要も高い一種の豪華本として扱われています。

さてここまでは、ヨーロッパを代表するコミック文化バンド・デシネを紹介してきました。一方、アジアのコミック事情はどうでしょうか?

やはりというべきか、日本の漫画文化の影響が大きく、例えばタイでは出版されるコミックの8割ほどが、日本の単行本がローカライズされて出版されているようです。
その中で、コミック文化が成熟し始めているのが、おとなり韓国です。現地ではコミックは「マヌァ」と呼ばれて親しまれています。

元々は日本の漫画の影響を受けて始まった韓国の「マヌァ」ですが、映画などと同様に国策として文化事業を促進する政策の後押しを受けて、高い芸術性を持った作家が世に出ています。
その流れの中から、日本で活躍するBoichi(代表作『サンケンロック』少年画報社刊)や、フリードローイングで細密な絵を描く独特な手法で世界的に評価を得ているキム・ジョン・ギといった作家が生まれています。

このように世界に目を向けると、それぞれの地域で豊かなコミック文化が育まれていることがわかります。 さて、ここでお話をガラリと変えて恐縮ですが、日本で、アメコミをはじめ海外のコミックを楽しむ文化に貢献した人物といえば誰でしょう? そう、皆さんご存じの小野耕世さんです。ShoPro Booksの刊行物では、ウィンザー・マッケイの『リトル・ニモ 1905-1914』の翻訳を手がけられたことでもおなじみですね。
リトル・ニモ 1905-1914
ウィンザー・マッケイ[著]
定価:6,000円+税
◆好評発売中!◆
 
そんな小野さんの講演会が、4月9日に開かれます。以下、詳細を記載します。  
ヨーロッパ・コミックスの冒険 ~出会いから現在までを語る~ 
フランス語圏で発行されるバンド・デシネ(BD)を始め、世界のマンガ文化圏の一角を担うヨーロッパ・コミックスについて、海外コミック研究の第一人者である小野耕世氏が、1950年代の出会いから歴史的な流れ、親交を得た作者たちとのエピソードと作品について、縦横無尽に語ります。 
【日時】2016年4月9日(土)14:00~16:00(13:30開場) 
【会場】日比谷図書文化館 4階スタジオプラス(小ホール) 
【参加費】1,000円 ※定員60名(事前申込順・定員に達し次第締め切りとなります) 
【申込方法】 電話(03‐3502‐3340)、Eメール(college@hibiyal.jp)、来館(1階受付)いずれかにて、
①講座名(または講演会名)、②お名前(よみがな)、③電話番号をご連絡ください。 

海外コミックの翻訳・研究の第一人者、小野さんのお話をうかがえる貴重な機会ですので、アメコミ・ファン、海外コミックファンだけでなく漫画を読まれる方々は、ぜひお越しください。

  それでは、今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!


(文責・山口侘助)

2016年2月22日月曜日

『バットマン:真夜中の事件簿』に至るまでの道のり

「アメコミ魂」読者のみなさま、こんにちは! 

今月224日頃から『バットマン:真夜中の事件簿』が順次発売になります。本書は「」シリーズ、「喪われた絆」、「ゼロイヤー」と続いてきた「ニュー52!」以降のバットマンを補完するエピソードを集めた短編集になります。そこで今回の「アメコミ魂」では、本書のご紹介の前に「ニュー52!」のバットマンシリーズをザザッと振り返ってみたいと思います。
バットマン:真夜中の事件簿
スコット・スナイダー他[作] グレッグ:カプロ他[画]
定価:2,200円+税
◆2月24日頃発売◆

新ユニバースとなる新生バットマン第一号は、悪の秘密結社「梟の法廷」の謎解きと恐怖の物語で幕を開けました。DCユニバースの構造を設定含めて再編したこのリランチで、本作初登場の「梟の法廷」という組織はその正体が完全な謎に包まれており、今までの設定を知らない新規読者でも十分に楽しめる内容になっています。
バットマン:梟の法廷
スコット・スナイダー[作]
グレッグ・カプロ[画]
定価:2,200円+税
◆好評発売中!◆

前巻に引き続き、本書ではいよいよ「バットマンvs.梟の法廷」の最終決戦が描かれております。ゴッサムシティの完全支配を狙う「梟の法廷」は、不死身の暗殺者タロンを放ちバットマンに襲いかかります。ゴッサムシティを守るべく、奮闘するバットマンのアクションももちろんですが、ミステリー要素満載のストーリー展開によって読み応え十分な作品です。ミスター・フリーズの誕生秘話も描かれており、ペンギンといったお馴染みのヴィランも登場しています! また、本作のクロスオーバー作品にあたる『バットマン:梟の夜』も一緒に読んでいただければ、いっそう楽しめるかと思います。
バットマン:梟の街
スコット・スナイダー[作]
グレッグ・カプロ[画]
定価:2,200円+税
◆好評発売中!◆

この第3巻では、あの最凶の男ジョーカーがゴッサムシティに帰ってきます。顔の皮を剥がされたジョーカーはこれまでより、はるかに残虐で凶悪となり、ゴードン本部長やアルフレッド、ロビン、ナイトウィング、バットガール、レッドフード、レッドロビンといった「ファミリー」にその魔の手が伸びます。バットファミリーが多数登場し、バットマンファンはもちろん、ジョーカーファンも満足の一冊。こちらもまた、本作のクロスオーバー作品にあたる『ジョーカー:喪われた絆〈上〉』『ジョーカー:喪われた絆〈下〉』を併読していただければ、より「喪われた絆」を楽しむことができます。
バットマン:喪われた絆
スコット・スナイダー[作]
ジェームズ・タインニンⅣ[画]
定価:2,000円+税
◆好評発売中!◆

そして、このあと「ゼロイヤー」シリーズによって、バットマンのオリジンが明らかになります

青年ブルース・ウェインの人間性、彼がバットマンになる決意など、オリジンにフォーカスした超重要エピソード。アルフレッドやゴードンといった、バットマンシリーズに欠かせない人物との関係や、リドラーことエドワード・ニグマ、レッドフードとの初遭遇も描かれます。バットマンが装備している数々のガジェットやその使い方を練習している貴重なシーンも見ることができます。レッドフードとの対決からリドラーが頭脳戦を仕掛けてきて次巻に続くという構成で、過去のエピソードをとてもドラマチックに描き直しています。また、メインストーリーだけでなく、ブルースに関する短編が3話とライターのスコット・スナイダーによる『バットマン#211稿も収録。スナイダーがいわゆる、ただの焼き直しにならないように、本書をどのようなコンセプトに基づいて描き上げたのかを知ることができます。
バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街
スコット・スナイダー[作]
グレッグ・カプロ[画]
定価:2,000円+税
◆好評発売中!◆

前巻のレッドフードとの激闘に続き、本作では悪の天才科学者ドクター・デスや高いIQを誇る知能犯リドラーがメインヴィランとして登場。戦いの規模が拡大し、ブルース・ウェインがコウモリから闇の騎士へと成長していく姿を描く、まさに完結にふさわしい内容となっています。ブルースが幼い頃、目の前で両親を射殺されるという悲惨な出来事によって、成長を余儀なくされ、身分を隠し放浪を経て、自ら自警団になるという決意をしました。そして、レッドフードの猛攻によって致命傷を負った時は、ついにバットマンとして生まれ変わりここに闇の騎士が誕生したのです。その後、本書においても幾多の死と再生を体験することによって、より強い存在へと進化していく……バットマンという、アメコミ界の象徴的ヒーローの原点には壮絶なドラマを描きます。過去エピソードのリメイクを越えて語り直された“ゼロイヤー”シリーズが、ここに堂々完結します。
バットマン:ゼロイヤー 暗黒の街
スコット・スナイダー[作]
グレッグ・カプロ他[画]
定価:2,400円+税
◆好評発売中!◆
ここまでの長大なドラマを補完するのが、「ニュー52!」版の第6巻にあたる『バットマン:真夜中の事件簿』です。原書につけられた「グレイブヤード・シフト」という副題は、深夜勤務という意味で、原書のハードカバー版が発売された時には、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・ランキング(コミック部門)で、初登場1位を記録しました。

本書には、『バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街』の序章にあたる『バットマン』#0(「新しき昨日」「後継者たち」)、同じく『バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街』のタイイン(外伝)にあたる『バットマン・アニュアル』#2(「妖婆」)、『バットマン・エターナル』を別視点から描き直した『バットマン』#28(「ゴッサム・エターナル」)など、計7冊分の読み切り、特別号のエピソードを収録しています。

「DCエクステンデッド・ユニバース」(DCコミックスの映画ユニバース)が本格的に始動する今年、バットマン周辺のノイズもグイグイ上がっていくハズ。本書を読めば、「ニュー52」以降のバットマンの物語をより立体的に楽しめること請け合いですので、ぜひお手に取って楽しんでください。

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!
 


(文責・山口侘助)

2016年2月15日月曜日

『クァンタム&ウッディ』第2巻、ホントに出します!

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!

DCコミックスマーベル・コミックスの二強による寡占状態が続いているアメリカンコミックですが、ダークホース・コミックスイメージ・コミックスブーム!スタジオなどの中堅出版社からもユニークなコミックが刊行されています。

今回は、そのなかでも新興出版社バリアント・エンターテインメントから刊行されている『クァンタム&ウッディ』をご紹介します。一昨年、小社から『クァンタム&ウッディ:世界最悪のスーパーヒーロー』を刊行しました。

ちなみに原題には「THE WORLD’S WORST SUPERHERO TEAM」という副題がついています。アメコミファンのなかには、この文言にピンと来た人がいるかもしれませんが、これはアベンジャーズの「THE WORLD’S MIGHTIEST SUPERHERO TEAM」をもじったもの。名は体を表すという言葉どおり、従来のヒーローコミックの定石をことごとく外したアクションコメディ作品です。

もともとは90年代にアクレイム・コミックから出版されていたシリーズなのですが、同社の倒産にともない、シリーズは打ち切りの憂き目に遭います。コミック自体も絶版状態になり、なかば伝説化した作品だったのですが、一部のコミックファンの間でカルトな人気を集めていて、21世紀に入り再び版権が復活。新シリーズのスタートへと結びつきます。

さて、この『クァンタム&ウッディ』、もともとはどういうお話かというと、元のシリーズでライターを務めたクリストファー・J・プリーストと、アーティストのM.D.ブライトは、どちらもアフリカ系アメリカ人。作り手の出自もあり、主人公コンビのひとりは黒人に設定されました。裕福で堅物の黒人エリックと、ホワイトトラッシュ(白人貧困層)のウッディ、幼なじみの2人が互いの父の真相を探るうちにスーパーパワーを手に入れ、ヒーローになるのが当時の設定です。

ちなみにウッディの名前の由来は、俳優ウディ・ハレルソンにちなんでいて、ヴィジュアルも彼からインスパイアを受けていることがうかがえます。ハレルソンといえば『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年公開)での怪演で注目を集めた後、多くのカルト作に出演しているベテラン俳優。やさぐれた演技に定評がある実力派です。いわゆるヒーロー像とはかけ離れた印象は、コミックのウッディ像にもぴったりはまります。

さて、これが新シリーズになると、ウッディはエリックの父デレクの養子になり、2人は義理の兄弟という関係に設定が変更されました。2人の関係性がより緊密になったことで、鬱陶しいのに離れることができない(離れられない理由は他にもありますが…)、いざというときにはガッチリとした信頼関係で結ばれるバディ物としての面白み、カタルシスが強化され、さらにコメディ要素も多くなり、よりエンターテインメント色が強くなったといえるでしょう。

それだけでなく、キャラクターの人種など、現代アメリカの世相をしっかりと反映し、設定面でもブラッシュアップが図られています。

カルトな旧シリーズ、それを引き継いだ新シリーズどちらもアメリカでは熱狂的なファンがいる作品ですが、それはここ日本でも同じです。

一昨年に『クァンタム&ウッディ:世界最悪のスーパーヒーロー』を刊行したところ、コアなアメコミファンの方々から熱狂的な支持を受けました。その後、続刊を希望する声が多く寄せられてきたのですが、他の作品との兼ね合いもあり、1年以上も音沙汰なしの状態でした。しかし皆さん、お喜びください。この度、3月9日頃からに第2巻『クァンタム&ウッディ:あぶないヒーロー、荒野に散る!?』が順次発売されます!
クァンタム&ウッディ: あぶないヒーロー、荒野に散る!?
ジェームス・アスムス[作] ミン・ドイル他[画]
定価:1,800円+税
◆2016年3月9日頃発売!◆
今回は、エリックが長年勤めた民間軍事会社で昇進したことにより、事件が勃発します。なぜ閑職に回されていたエリックが昇進したのか。そこにはとある計画が隠されていました。

2巻では、コメディ要素、とりわけ政治ギャグ、社会風刺が山盛りで詰め込まれています。現代アメリカの社会事情に詳しい方なら、思わずニヤリとしてしまうネタのオンパレードです。

もちろん、そうではない方を置いてきぼりにはしません。前巻に引き続き翻訳を務められた光岡三ツ子さんによるツボを押さえた用語解説と併せて読めば、どなたでもきっと本作の魅力のトリコになるハズです。

DCマーベルの堂々たるヒーローコミックももちろん魅力的ですが、たまにはこんな一風変わった作品を読んでみてはいかがでしょうか?

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!


(文責・山口侘助)

2016年2月8日月曜日

ポップアイコンになったヴィラン、ハーレイ・クインの魅力

「アメコミ魂」をご覧の皆さん、こんにちは!

今回は、DCコミックスのなかでも高い人気を誇るヴィラン、ハーレイ・クインのご紹介です。

日本のアメコミ・ファンの方にしてみれば、バットマンの宿敵ジョーカーの情婦という一ヴィランとしての印象が強いかもしれませんが、本国アメリカでは、ただいまポップアイコンと呼んでもいいほど高い人気を集めています。

昨年1030日、グーグルが検索データをもとに割り出したハロウィン衣装のトレンドで、ワンダーウーマン、ミニー・マウス、レイア姫、ミニオンズなど名だたるキャラクターを抑え、女性のコスチュームでハーレイが1位に輝きました。とくにヒューストン、フィラデルフィア、シアトルで高い検索結果が得られたそうです。

さらに「ニュー52」以降のシリーズをまとめた『ハーレイ・クイン:ホット・イン・ザ・シティ』(小社より210日に刊行)は、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・ランキングにて初登場7位を記録し、3週目には3位まで登り詰めました。
ハーレイ・クイン: ホット・イン・ザ・シティ(THE NEW 52!)
アマンダ・コナー他[作] チャド・ハーディン[画]
定価:2,200円+税
◆2016年2月10日頃発売◆
そもそもハーレイは、コミックではなくアニメのキャラクターとして生み出されました。テレビアニメ『バットマン』のエピソード「ジョーカーの陰謀」(1992911日放送)でデビューを飾り、その1年後、『バットマン・アドベンチャーズ』でコミックにも進出しました。

当初はジョーカーのサイドキック兼恋人という二番手の位置づけでしたが、キッチュでネアカでキュートなキャラクターが受けて、90年代以降に登場したDCコミックスのキャラクターのなかでもズバ抜けた人気を獲得しました。

その人気を裏づけるように、2014年にはソロシリーズがスタート。2015年にはレギュラーシリーズの他に、3冊の増刊号、ミニシリーズ『ハーレイ・クイン&パワーガール』、隔月誌『ハーレイズ・リトル・ブラックブック』が創刊されました。女性で、しかもヴィランのキャラクターが、これほどの人気を得ることは異例といえるでしょう。

その人気のほどがうかがえるエピソードをもつご紹介しますと、映画監督のケビン・スミスは、彼女の魅力にヤラれた結果、愛娘をハーレイ・クイン・スミスと名付けてしまったそうです。

そんなハーレイがいよいよ映画にも進出します。今年910日に日本での公開が決まった『スーサイド・スクワッド(予告編はこちら
のメインキャラとして登場します。ハーレイを演じるのは、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2014年航海)で、主人公ジョーダン・ベルフォードの妻ナオミを演じたマーゴット・ロビー。蝋のように白い肌と毒々しいメイクにツインテールという「ニュー52」以降のハーレイを体現するヴィジュアルで、映画ファン、コミックファンから注目が集まっています。

もともとアメリカ国内では絶大な人気を集めていたハーレイの人気が、世界的に波及しはじめている理由の1つに、この映画版『スーサイド・スクワッド』が影響していることは想像に難くありません(ちなみに小社より『スーサイド・スクワッド:悪虐の狂宴』が刊行されています)。
スーサイド・スクワッド: 悪虐の狂宴(THE NEW 52!)
アダム・グラス[作] フェデリコ・ダロッチオ[画]
定価:2,000円+税
◆好評発売中!◆
さて、今月10日に『ハーレイ・クイン:ホット・イン・ザ・シティ』が刊行されます。本書は『ハーレイ・クイン』の#0-8をまとめた単行本で、先ほども触れた通り、セールス面でも大きな成功を収めた作品です。ひょんなことからブルックリンのビルの大家になったハーレイとビルの住人たちの交流を主軸に、賞金稼ぎや凶悪な脱獄囚たちとの戦いが織り込まれ、はちゃめちゃなストーリーが展開します。

作・画を務めるアマンダ・コナーが創出したハーレイは、ジョーカーの情婦という面よりも、自立した女性像を強く感じさせます。例えば『マッドマックス 怒りのデスロード』のフュリオサ、あるいは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のレイといった、ここ数年の映画界における女性主人公たちの姿を彷彿とさせるのです。いま、フィクション表現の世界的な傾向として、フェミニズムを強く感じさせるキャラクターたちが生み出されていますが、本書もその潮流にある作品といえるかもしれません。

リランチ以前と以後、他作品との関係で設定に幅があるハーレイ。アメコミに馴染みのない人には、なかなかつかみどころキャラクターですが、本書では「ニュー52」以前の全エピソードのあらすじを紹介しているので、これから読み始める人でも安心して作品に触れられると思います(翻訳家・高木亮さんによる渾身の解説です!)。

ぜひ、この機会にお手にとっていただき、“キューピッド・オブ・クライム”とも呼ばれるハーレイのキュートな魅力にヤラれちゃってください!

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!



(文責・山口侘助)

2016年2月1日月曜日

世界最速の男フラッシュが再び疾走する!

「アメコミ魂」をご覧の皆さま、こんにちは!

本日は、あるヒーローにクローズアップしようと思います。そのヒーローとは、世界最速の男、フラッシュです。

ニュー52」以降、フラッシュとして活躍しているのはバリー・アレンですが、他にも世界最速の男は3人いて、計4人がフラッシュになりました。

初代はジェイ・ギャリック1940年の『フラッシュコミックス#1で登場しました。大学のフットボール選手だったジェイが、ある日実験室で“重水”の煙を吸い込み、高速移動の能力を身につけました。ヒーロー活動から引退した後、中年期に復帰をするなど、ジェイは長い期間ファンに親しまれました。「ニュー52」以降は若返り、別次元の地球アース2に登場します。

2代目は、「ニュー52」で主役として活躍しているバリー・アレン。稲妻と化学薬品を浴びて高速移動の能力を獲得。初登場は1956年の『ショーケース#4で、1985年から始まったクロスオーバーイベント『クライシス・オン・インフィニット・アース』で命を落としたのですが、2008年のイベント『ファイナル・クライシス』から翌年の『フラッシュ:リバース』の流れで復活しました。

3代目はウェリー・ウェスト。バリー・アレンの婚約者で後に妻になるアイリス・ウェストの甥です。バリーと同様の事故に遭い能力を得ると、まずはフラッシュのサイドキック、キッド・フラッシュになり、前述の「クライシス・オン・インフィニット・アース」でバリーが命を落とすと、その跡を継いで3代目フラッシュになりました。

4代目はバート・アレン。姓からもわかるように、2代目フラッシュのバリーとは血縁関係にあります。バリーとアイリスの孫で、特異体質を治療するために未来からやってきて、3代目フラッシュのサイドキック、インパルスとして活躍した後、キッド・フラッシュ(2代目)を名乗り、2005年のイベント「インフィニット・クライシス」で3代目が姿を消したことで4代目フラッシュとなりました。

このように、代替わりによってキャラクターの鮮度を保ち続けてきたのが、フラッシュの特徴と言えるでしょう。

さて、「ニュー52」以降、2代目フラッシュことバリー・アレンが再び主人公になったのですが、1990年のドラマ版、そして現行のドラマ『THE FLASH / フラッシュ』でも主人公はバリーになっています。なぜ彼が、他のフラッシュたちよりも語られることが多いのかといえば、それはDCコミックスのユニバース全体に関わる功績を残しているからです。

第二次大戦以後、ヒーロー物の人気が衰退し、代わりに台頭した犯罪物やホラー物が社会的なバッシングを受けているときに、2代目バリー・アレンが過去のヒーローをモダンにアップデートして登場したのです。その後、1961年の『フラッシュ#123にヒーローたちが住むもう1つの地球“アース2”が登場。このことによって、DCコミックスを特徴づける多次元宇宙“マルチバース”が確立されました。

このようにDCコミックスのその後を左右するキャラクターが、2代目フラッシュ、バリー・アレンだったのです。

ShoPro Booksでは、「ニュー52」以降の記念すべき第1巻で新たなバリーが大活躍する『フラッシュ:新たな挑戦』(紹介記事はこちら)を昨年刊行しました。

フラッシュ:新たな挑戦
フランシス・マナプル[作・画]
ブライアン・ブッチェラート[作・彩色]
定価:2,000円+税
◆好評発売中!◆
そして、それに続く第2巻『フラッシュ:ローグズの逆襲』を3月に刊行いたします。本書では、そのタイトル通り、スーパーヴィランの犯罪チーム“ローグズ”が大々的にフィーチャーされた作品になります。前作にも登場したキャプテン・コールドを中心に、ウェザー・ウィザード、グライダー、ヒート・ウェーブなどのヴィランたちの背景が深く掘り下げられ、フラッシュとの対決へと至ります。さらに前巻でたどりついたゴリラシティの王、キング・グロッドとの確執も描かれ、次巻への期待をさらに高める内容になっています。

この第2巻は続編の刊行を望む声が多く寄せられた作品で、ドラマを含めて今後のDCコミックスの展開を追う上で見逃すことのできない作品です。ぜひお手にとってご覧ください。本ブログ、公式Twitterでも、刊行の続報をお届けしていきますので、どうぞご期待ください!

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!



(文責・山口侘助)