2016年2月8日月曜日

ポップアイコンになったヴィラン、ハーレイ・クインの魅力

「アメコミ魂」をご覧の皆さん、こんにちは!

今回は、DCコミックスのなかでも高い人気を誇るヴィラン、ハーレイ・クインのご紹介です。

日本のアメコミ・ファンの方にしてみれば、バットマンの宿敵ジョーカーの情婦という一ヴィランとしての印象が強いかもしれませんが、本国アメリカでは、ただいまポップアイコンと呼んでもいいほど高い人気を集めています。

昨年1030日、グーグルが検索データをもとに割り出したハロウィン衣装のトレンドで、ワンダーウーマン、ミニー・マウス、レイア姫、ミニオンズなど名だたるキャラクターを抑え、女性のコスチュームでハーレイが1位に輝きました。とくにヒューストン、フィラデルフィア、シアトルで高い検索結果が得られたそうです。

さらに「ニュー52」以降のシリーズをまとめた『ハーレイ・クイン:ホット・イン・ザ・シティ』(小社より210日に刊行)は、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・ランキングにて初登場7位を記録し、3週目には3位まで登り詰めました。
ハーレイ・クイン: ホット・イン・ザ・シティ(THE NEW 52!)
アマンダ・コナー他[作] チャド・ハーディン[画]
定価:2,200円+税
◆2016年2月10日頃発売◆
そもそもハーレイは、コミックではなくアニメのキャラクターとして生み出されました。テレビアニメ『バットマン』のエピソード「ジョーカーの陰謀」(1992911日放送)でデビューを飾り、その1年後、『バットマン・アドベンチャーズ』でコミックにも進出しました。

当初はジョーカーのサイドキック兼恋人という二番手の位置づけでしたが、キッチュでネアカでキュートなキャラクターが受けて、90年代以降に登場したDCコミックスのキャラクターのなかでもズバ抜けた人気を獲得しました。

その人気を裏づけるように、2014年にはソロシリーズがスタート。2015年にはレギュラーシリーズの他に、3冊の増刊号、ミニシリーズ『ハーレイ・クイン&パワーガール』、隔月誌『ハーレイズ・リトル・ブラックブック』が創刊されました。女性で、しかもヴィランのキャラクターが、これほどの人気を得ることは異例といえるでしょう。

その人気のほどがうかがえるエピソードをもつご紹介しますと、映画監督のケビン・スミスは、彼女の魅力にヤラれた結果、愛娘をハーレイ・クイン・スミスと名付けてしまったそうです。

そんなハーレイがいよいよ映画にも進出します。今年910日に日本での公開が決まった『スーサイド・スクワッド(予告編はこちら
のメインキャラとして登場します。ハーレイを演じるのは、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2014年航海)で、主人公ジョーダン・ベルフォードの妻ナオミを演じたマーゴット・ロビー。蝋のように白い肌と毒々しいメイクにツインテールという「ニュー52」以降のハーレイを体現するヴィジュアルで、映画ファン、コミックファンから注目が集まっています。

もともとアメリカ国内では絶大な人気を集めていたハーレイの人気が、世界的に波及しはじめている理由の1つに、この映画版『スーサイド・スクワッド』が影響していることは想像に難くありません(ちなみに小社より『スーサイド・スクワッド:悪虐の狂宴』が刊行されています)。
スーサイド・スクワッド: 悪虐の狂宴(THE NEW 52!)
アダム・グラス[作] フェデリコ・ダロッチオ[画]
定価:2,000円+税
◆好評発売中!◆
さて、今月10日に『ハーレイ・クイン:ホット・イン・ザ・シティ』が刊行されます。本書は『ハーレイ・クイン』の#0-8をまとめた単行本で、先ほども触れた通り、セールス面でも大きな成功を収めた作品です。ひょんなことからブルックリンのビルの大家になったハーレイとビルの住人たちの交流を主軸に、賞金稼ぎや凶悪な脱獄囚たちとの戦いが織り込まれ、はちゃめちゃなストーリーが展開します。

作・画を務めるアマンダ・コナーが創出したハーレイは、ジョーカーの情婦という面よりも、自立した女性像を強く感じさせます。例えば『マッドマックス 怒りのデスロード』のフュリオサ、あるいは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のレイといった、ここ数年の映画界における女性主人公たちの姿を彷彿とさせるのです。いま、フィクション表現の世界的な傾向として、フェミニズムを強く感じさせるキャラクターたちが生み出されていますが、本書もその潮流にある作品といえるかもしれません。

リランチ以前と以後、他作品との関係で設定に幅があるハーレイ。アメコミに馴染みのない人には、なかなかつかみどころキャラクターですが、本書では「ニュー52」以前の全エピソードのあらすじを紹介しているので、これから読み始める人でも安心して作品に触れられると思います(翻訳家・高木亮さんによる渾身の解説です!)。

ぜひ、この機会にお手にとっていただき、“キューピッド・オブ・クライム”とも呼ばれるハーレイのキュートな魅力にヤラれちゃってください!

それでは今週はこの辺で。また来週お会いしましょう!



(文責・山口侘助)