2015年4月27日月曜日

『キック・アス』と『ネメシス』を結ぶミラーワールド!

皆さん、こんにちは!

先日、ついに感動の大団円を迎えたコミック『キック・アス3。皆さんお読みいただけましたでしょうか? じつはそちらの作品では、アメコミ史に残る大ヒットシリーズの結末とともに、新たなユニバースの誕生がこっそり描かれていました。その新ユニバースこそが、“ミラーワールド”です!
『ネメシス』
マーク・ミラー[作]
スティーブ・マクニーブン[画]
定価:本体2,000円+税
●好評発売中!●
ミラーワールドとは……2003年のコミック『ウォンテッド』以来、人気ライターのマーク・ミラーがオリジナル作を刊行する際に使っていた個人ブランド名。発表する出版社が異なっても、本のどこかにミラーワールドのロゴが踊っていたので、自分の制作会社をアピールしているのかと思いきや、じつは文字通り一つの“ユニバース”を形成していることが最近判明しました。つまり、マーク・ミラーのオリジナル作品の多くは、同じ世界で起こっている出来事だったのです。

そして、『キック・アス3“ある部分”で言及されていた事件でもある作品が、今月同時に発売された『ネメシス』。では、その物語は……

強靭な肉体、莫大な資産、そして邪悪極まりない頭脳……すべてを兼ね備えたスーパーヴィラン“ネメシス”。世界中の有能な警官を次々と葬り去ったヤツが次に狙いを定めたのは、アメリカのブレイク・モロウ本部長。しかも、今回の標的はヤツにとって特別な意味があった……。大胆かつ卑劣な作戦で、アメリカ全土を混乱に陥れるネメシス。肉体と精神の限界に挑むかのような攻防戦の行方は……?

この“逆転したバットマン”とでもいえる過激な物語で、アートを担当したのは、次回のキャプテン・アメリカ映画の元ネタでもある『シビル・ウォー』や、年老いたウルヴァリンを主人公にした刺激的なディストピアもの『オールドマン・ローガン』といった話題作でミラーとタッグを組んだ、トップアーティストのスティーブ・マクニーブン。アメコミ界を代表する人気作家コンビによるオリジナル作品『ネメシス』、ぜひ『キック・アス3と合わせてお楽しみください!

さて、他に一体どんな作品がミラーワールドにはあるのかというと……

『ウォンテッド』(小社刊行)20032005年刊。『アンファニーズMark Millar's the Unfunnies20042007年刊。アンソニー・ウィリアムズ画。カートゥーン世界のキャラクターたちが、ある日次々とグロテスクな事件に巻き込まれて……。

『チョーズンChosen2004年刊。ピーター・グロス画。自分が現代に生まれ変わったイエス・キリストだと気づいた少年の運命を描く。

『キック・アス』(小社刊行)20082010年刊。『ウォー・ヒーローズWar Heroes2008年~。トニー・ハリス画。アメリカの対テロ戦争を背景に、薬によってスーパーヒーローのように強化された元犯罪者の兵士たちが、テロ組織に戦いを挑む。

『ネメシス』(本書)20102011年刊。

『スペリアー』(小社刊行予定)20102013年刊。レイニル・フランシス・ユー画。重病をわずらった少年が、異星人の猿にスーパーマン的ヒーローに変身する力を授けられるが……。

『キック・アス2(小社刊行)20102013年刊。 

『スーパークルックス』(小社刊行予定)2012年刊。レイニル・フランシス・ユー画。落ちぶれたB級ヴィランたちが企てた、一発逆転の大勝負の行方は……? 

『キングスマン:ザ・シークレット・サービス』(小社刊行予定)20122013年刊。デイブ・ギボンズ画。社会の底辺であえぐ少年が、スーパースパイであるおじの紹介で、エリートぞろいの英国スパイ学校に入学することに!

『ヒットガール』(小社刊行)20122013年刊。

『ジュピターズ・レガシーJupiter's Legacy20132015年刊。フランク・クワイトリー画。現代社会におけるスーパーヒーロー一族の苦闘、堕落、世代間の葛藤を描く。

『スターライトStarlight2014年刊。ゴーラン・パーロフ画。フラッシュ・ゴードンやバック・ロジャースを思わせるパルプSF的ヒーローが年老いて、最後の冒険に臨む。

MPH2014年~。ダンカン・フィグレド画。4人の不良少年が手に入れたストリート・ドラッグには、高速移動を可能にする作用があった!『キック・アス3(小社刊行)20132014年刊。『ジュピターズ・サークルJupiter's Circle2015年~。ウィルフリード・トーレス画。『ジュピターズ・レガシー』続編。

『クロノノーツChrononauts2015年~。ショーン・ゴードン・マーフィー画。世界初の時間旅行者となった二人の青年を描いたバディもの。

●=映画化作品○=ここ23年で映画化に向けて動きのあった作品――となります。そして赤字『キック・アス3内で言及されている作品です。映画化の状況はさまざまですが、なんだかスゴい勢いですね。コミック作家の個人レーベルといえば、かつてアラン・ムーアがジム・リーのもとでアメリカズ・ベスト・コミックス(ABC)を立ち上げたこともありましたが、展開の規模ではABC以上。一流のアーティストと組んで質の高いエンターテインメント作をコンスタントに刊行するミラーワールド、今後の発展に要注目です。

小社では、アメリカでヒットを飛ばした映画版の日本公開も楽しみな『キングスマン:ザ・シークレット・サービス』をはじめ、『スーパークルックス』『スペリアー』といった作品が発売予定となっていますので、そちらのほうもどうぞお楽しみに!

ではでは、今日はこんなところで 


(文責:中沢俊介)

2015年4月20日月曜日

闇の騎士と鋼鉄の男!

「アメコミ魂」読者のみなさま、こんばんは!

『バットマン/スーパーマン:クロスワールド』
グレッグ・パック[作]
ジェイ・リー[画]
定価:本体2,000円+税
●4月22日頃発売●
今月は新刊タイトルが3冊ありますが、その中から今回ご紹介するタイトルは『バットマン/スーパーマン:クロスワールド』です!

アメコミファンでなくとも、一度は耳にしたことのある二大ヒーローバットマンスーパーマンが共演する本作ですが、それぞれのキャラクター設定やバックグラウンドといった詳細が分からなくても、DCコミックスの最新シリーズである“ニュー52”の第1巻ということもあり、そのあたりは比較的読みやすく、初心者にも入りやすい内容になっているかと思います。

それでは、ストーリーのあらすじをご紹介いたします。

二大スーパーヒーローであるバットマンとスーパーマン……本書は二人が出会う以前の物語である。『ジャスティス・リーグ:誕生』で初めてスーパーヒーローチームを結成し、ダークサイドと一戦を交えたずっと前の物語。バットマンは経験が浅く、スーパーマンは空の飛び方すら知らない、そんな時代である。だが、これはプライム・アース(現行世界/ニュー52)でのことだった……。

謎の女神によって、“ニュー52”のバットマンとスーパーマンは別次元に転送されてしまった。そこは奇妙な並行世界だった。一見、元の世界と変わらないように見えるが、この世界にはとてつもない危険をはらんでいたのだ……。互いの存在すら知らなかった地球最高のヒーローである二人は、初めて手を組むことになる。

しかし、現行世界に戻るためには、別世界の自分たち――つまり“アース2”のバットマンとスーパーマンとも協力しなくてはならなかったのだ……! “二つの世界”が交差するとき、いったい何が起こるのか!?

このように、現行世界のほかに並行世界が存在しており、そこにもバットマンスーパーマンが存在するということなのですがこのマルチバース(多元宇宙)というコンセプトは、DCユニバースにおいてとても重要な要素となってきます。

本書はストーリーテーマとして、マルチバースを描いていることからも、その概要を理解するという点でも分かりやすく今後のDCユニバースを読み進めていくうえで適しているのではないでしょうか。

そのマルチバースについて、キャラクター紹介も交えながら簡単に触れてみたいと思います。

“プライム・アース”
いわゆる、現行世界でメインの物語が展開するユニバースを指します。
本書では、下記のキャラクターたちがプライム・アースとして登場しています。

・バットマン/ブルース・ウェイン
闇の騎士。格闘および戦術の達人。

・スーパーマン/クラーク・ケント
鋼鉄の男。常人を超えるスーパーパワーの持ち主。

・キャットウーマン/セリーナ・カイル
猫の姿をした怪盗。敵か味方か立場は不明。

“アース2”
プライム・アースとは別に存在する並行世界であり、ここから上記のバットマンスーパーマン、キャットウーマンに加えて以下のキャラクターたちがいます。

・ワンダーウーマン/ダイアナ
アマゾン族の生き残り。怪力、知力、飛行能力を授けられた。

・ロイス・レーン
クラーク・ケントの妻で、超一流のジャーナリスト。

タイトルにある、バットマンスーパーマンだけでなく、それぞれの作品に関連したキャットウーマンやロイス・レーンも登場していますね。

これらマルチバースに関する詳しい内容は本書の別紙解説において翻訳をご担当いただいた、中沢氏がその起源・歴史をDCユニバースのもう一つの重要な要素である、“ニューゴッズ”と合わせて、概要をまとめていただいています。そちらも一読いただければより一層、理解が深まると思います。

そして、本書で初登場となるケイヨというキャラクターがいます。

別名をカオス・ブリンガーと呼ぶ彼女は、マルチバース間を自由自在に行き来することができる能力を持ち、ある目的を遂行するために現行世界と並行世界にわたり、ストーリーの鍵を握っています。

往年のキャラクターの活躍はもちろん、このケイヨにも注目してみてください。

メインストーリーのあとに収録されている、DCユニバース最強のヴィランであるダークサイドの“ニュー52”版誕生秘話である「特別編:ダークサイド――神化」にも登場しています!

著者は、ライターを担当したのがグレッグ・パックで2003年のインディペンデント映画『ロボット・ストーリーズ』で数多の映画賞を受賞して注目を集めました。

2000年代後半には、マーベル・コミックスでハルクなどの脚本を担当し、高い評価を得ており、本作でも、マルチバースや過去の回想シーンなど、とてもスケールの大きい展開に驚かされました。

また、アーティストはスティーブン・キングの長編小説をコミック化したことでも知られるジェイ・リーが中心となって担当しています。

他のアメコミとはまた違った、繊細な描写はある意味強いインパクトを受けました。
巻末には、『バットマン/スーパーマン』制作の裏側が収録されており彼らのコメントや、ジェイ・リーのペンシル画を堪能できます!

メインの物語が展開するプライム・アース、そして2013年に刊行した『バットマン:アースワン』『スーパーマン:アースワン』で描かれているのがアース1ですが、本書ではいよいよ、アース2の存在が判明しました。

今後のDCユニバースの展開においても、重要なポジションとなっている『バットマン/スーパーマン:クロスワールド』は4月22日頃発売予定です。

ぜひ、お手に取っていただき地球最高のヒーローである、二人の活躍をお楽しみください!

それではまた次回に。


(文責:渡辺直経)

2015年4月6日月曜日

アメコミ実写化先取り情報(非ヒーロー系)と『SC4』

皆さん、こんにちは!

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『アントマン』『ファンタスティック・フォー』の全米公開も控え、コミックの実写映像化はますます花盛り! とはいえ、ハデな話題が目立つのはやはりスーパーヒーロー系作品が多いので、今回はそれ以外の“非ヒーロー系”とでも呼べるコミックのアメリカでの実写化最新動向をちょっとまとめてみました(何かヌケがあったらゴメンナサイ!)。ここ最近のめぼしいニュースはというと……

テレビ●
○『プリーチャー(Preacher)』……ガース・エニス/スティーブ・ディロンによる1990年代の伝説的名作コミック。長年映像化が噂されていたが、セス・ローゲン『ブレイキング・バッド』のサム・キャトリンらによる製作でパイロット版制作決定。主要キャストも着々と決まって、ついに来年テレビ放送なるか?

『ルシファー(Lucifer)』……あの『サンドマン』のスピンオフ作品。ひとまず映画『アンダーワールド』のレン・ワイズマン監督でテレビのパイロット版制作決定。

○『ラザラス(Lazarus)』……映画にもなった『ホワイトアウト』やバットマン作品のライターとして知られる小説家グレッグ・ルッカと、マイケル・ラークによる2013年創刊のディストピア系SFコミック。テレビシリーズ化の企画進行中。

○『ザ・ディサイプルズ(The Disciples)』……30デイズ・ナイト』のスティーブ・ナイルズによる、5月創刊予定のSFホラーコミックを、ウェス・クレイヴンがいちはやくテレビ化に乗り出したとのこと。

映画●
○『ザ・クロウ(The Crow)』……もっぱら1990年代の映画シリーズでおなじみですが、原作者ジェイムズ・オバーがクリエイティブ・コンサルタントを務めるリブート映画が、今春撮影開始予定とのニュースが。

○『クロノノーツ(Chrononauts)』……『キック・アス』『キングスメン:ザ・シークレット・サービス』マーク・ミラーによるタイムトラベル・バディもの。先月創刊したところを、早くも米ユニバーサルが映画化権取得。

○『オフィサー・ダウン(Officer Downe)』……『ベン10などのアニメからスーパーヒーロー・コミックまで、幅広く活躍するライター、ジョー・ケイシーによるカゲキな警官アクション。テレビドラマ『サン・オブ・アナーキー』のキム・コーツ主演、スリップノット(!)のショーン・クラハン監督で撮影を開始したとのこと。

○『アイ・キル・ジャイアンツ(I Kill Giants)』……以前、小学館より日本版も発売されたジョー・ケリー/ケン・ニイムラによるポップなコミック。『ハリー・ポッター』のクリス・コロンバス製作で映画化企画進行中。

○『ザ・スカルプター(The Sculptor)』……かつて日本でも『マンガ学』が話題になったコミック作家スコット・マクラウドによる、芸術家の創作をテーマにした久しぶりのフィクション。ソニー・ピクチャーズが映画化権を獲得。

○『クラッシュ・ライアン(Crash Ryan)』……1980年代にマーベル傘下のエピック・コミックスで発表されたオリジナル・コミック。別次元の1930年代を舞台にした航空アクション・コミックの映画化権を、とあるプロデューサーが取得。

○『ホークス・ハンターズ(Hoax Hunters)』……コミック雑誌『ヘヴィ・メタル』のコミックブック市場参入第1弾として、イメージ・コミックスから移籍した超常現象ハンターもの。マーベルの『エージェント・オブ・シールド』に関わっている脚本家を迎え、映画化進行中。

……と、さまざまなレベルでいろんな企画が動いているようです。そして、現在のこうした流れの先駆者といえば、やはりフランク・ミラーの名を欠かすわけにはいきません。そんな彼の代表作の最終巻――つまり『シン・シティ4が、先月下旬に発売されました! 本巻にはシリーズ最大のボリュームを誇る、本邦初邦訳長編「ヘル・アンド・バック」を収録。では、どんな物語かというと……

『シン・シティ4』
フランク・ミラー[作・画]
定価:本体2,000円+税
●好評発売中!●
退役軍人のウォーラスは、夏のある夜、崖から海に飛び込んだ一人の少女を救う。彼女の名前はエスター。何かわけありに見える彼女とウォーラスは、すぐに意気投合する。しかし、バーから出た二人は何者かに襲われ、気がつくとエスターはさらわれ、ウォーラスは警察に逮捕されていた。彼女を捜すウォーラスは、警察も絡む大規模な人身売買組織に、たった一人で戦いを挑むことになる……。

マーヴドワイトとはまた趣きの異なる――だが強い!――新キャラ、ウォーラスの活躍が満喫できる作品となっています。マヌート大佐デリアなど、それまでお読みいただいた皆さまにはおなじみシン・シティの住人たちも、もちろん大勢登場!

そして本作の見所として要注目なのは、なんといってもフルカラーページ! コミック本編としてはシリーズ唯一であるこの場面、内容的にもインパクト充分。ある事情によって、コミック映画などポップ・カルチャーのキャラクターが画面狭しと入り乱れるのです。どんなキャラクターが登場するか、一部をご紹介すると……

○フランク・ミラー作品300 スリーハンドレッド』のスパルタ王レオニダス、ビッグ・ガイ&ラスティ・ザ・ボーイ・ロボット『ギブ・ミー・リバティ』のマーサ・ワシントン……

○その他コミック全般キャプテン・アメリカエレクトラワンダーウーマンサージャント・ロックヘルボーイ新聞マンガのヘガー・ザ・ホリブル、『子連れ狼』の拝一刀と大五郎……

○映画などダーティハリーランボー怪傑ゾロ、映画『ロボコップ』に登場した法務執行ドロイドED-209ハットしてキャット、旧約聖書のモーセ、女の子向けドールのラガディ・アン空山基のセクシー・ロボット……

どうしてそんなことになるのか……ぜひご覧になってお確かめください! コミック界のカリスマ、フランク・ミラーが1991から10年近くかけて紡いできた物語もこれで完結。絵柄の変化/進化を見比べるもよし、巻末のゲスト作家によるピンナップ・ギャラリーで、当時のコミック界とミラーの勢いを偲ぶもよし。7におよぶ原書を4にまとめた日本版『シン・シティ』、ぜひこの機会に揃えていただければと思います。 

そして、フランク・ミラーらが切り拓いた道から、アメコミ業界では現在も魅力的なオリジナル作品が生まれています。小社でもマーク・ミラー『ネメシス』、欧米でただいま最高の評価を受けているといっても過言ではないイメージ・コミックス『サーガ』など、注目作を刊行していく予定です。こちらのほうもぜひご期待ください。

『ネメシス』
マーク・ミラー[作] スティーブ・マクニーブン[画]
定価:本体2,000円+税
●4月発売予定●
ではでは、今日はこんなところで失礼します。


(文責:中沢俊介)