2015年2月23日月曜日

コウモリの誕生! 『バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街』

「アメコミ魂」読者のみなさま、こんばんは!

今回ご紹介するタイトルは『バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街』です!
『バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街』
スコット・スナイダー他[作]
グレッグ・カプロ他[画]
定価:本体2,000円+税
●3月6日頃発売●
本書は、DCコミックスの最新シリーズ“ニュー52”におけるバットマンの第4巻にあたり、
スコット・スナイダー、グレッグ・カプロ、ダニー・ミキ、ラファエル・アルバカーキといったベストセラー作家チームによる、現代版バットマンの誕生秘話を新しい視点で語ったものになっております。

「アメコミ魂」の読者さんはご存知かもしれませんが、ここで簡単にこれまでの“ニュー52”バットマンシリーズを振り返ってみたいと思います。

第1巻『バットマン:梟の法廷』
▲『バットマン:梟の法廷
  定価:本体2,000円+税
●好評発売中●
新ユニバースとなる新生バットマン第一号は、悪の秘密結社「梟の法廷」の謎解きと恐怖の物語で幕を開けました。

DCユニバースの構造を設定含めて再編したこのリランチで、本作初登場の「梟の法廷」という組織はその正体が完全な謎に包まれており、
今までの設定を知らない新規読者でも十分に楽しめる内容になっています。

第2巻『バットマン:梟の街』
▲『バットマン:梟の街
定価:本体2,200円+税
●好評発売中●
『バットマン:梟の法廷』の続巻である本書では、いよいよ「バットマンvs.梟の法廷」最終決戦が描かれております。ゴッサムシティの完全支配を狙う「梟の法廷」は、不死身の暗殺者タロンを放ちバットマンに襲いかかります。

ゴッサムシティを守るべく、奮闘するバットマンのアクションももちろんですが、ミステリー要素満載のストーリー展開によって読み応え十分な作品です。

ミスター・フリーズの誕生秘話も描かれており、ペンギンといったお馴染みのヴィランも登場しています! また、本作のクロスオーバー作品にあたる『バットマン:梟の夜』も一緒に読んでいただければ、いっそう楽しめるかと思います。

第3巻『バットマン:喪われた絆』
▲『バットマン:喪われた絆 定価:本体2,000円+税
●好評発売中●
いよいよこの第3巻では、あの最凶の男がゴッサムに帰ってきます。そう、犯罪界の道化王子ことジョーカーです! 顔の皮を剥がされたジョーカーはこれまでより、はるかに残虐で凶悪となり、
ゴードン本部長やアルフレッド、ロビン、ナイトウィング、バットガール、レッドフード、レッドロビンといった「ファミリー」にその魔の手が伸びます……。

バットファミリーが多数登場し、バットマンファンはもちろん、ジョーカーファン待望の一冊となっております。こちらもまた、本作のクロスオーバー作品にあたる『ジョーカー:喪われた絆〈上〉』『ジョーカー:喪われた絆〈下〉』を併読していただければ、より「喪われた絆」を楽しむことができます。

そして、このあと「ゼロイヤー」というストーリーが始まりバットマンのオリジンに迫るという流れになります。では、本書のあらすじをご紹介します。

ゴッサムの闇のなかから、正体不明の怪人物が現れる。レッドフードと名乗るその男は、暴力的な脅迫手段を用いて一般市民を自分の仲間に加え、略奪と殺人を繰り返す。

彼らの犯行は一見無差別に思えたが、実はその裏には大いなる計画が隠されていた。彼はウェイン産業を操ることで、ゴッサムの息の根を止めようとしていたのだ。

レッドフード・ギャングの蛮行を阻止するためには、ブルース・ウェイン自身も、恐怖を武器として戦う方法を学ばねばならない。

ブルースは隠遁生活を捨て去り、もっと大きな存在、もっとダークな存在へと生まれ変わる必要がある。

そう、彼はコウモリにならねばならない

ブルース・ウェインという青年の人間性、さらにはバットマンになることへの決意など、まさにその起源にフォーカスしたストーリー展開は要注目です!
そして、ゼロイヤーで登場する主要登場人物をブルースを含め、紹介したいと思います。

・バットマン/ブルース・ウェイン
数年間の放浪生活を経て、ゴッサムシティに戻ってきたばかりの青年。

・フィリップ・ケイン 
ブルースの母方の伯父。

・アルフレッド・ペニーワース
先代の頃からウェイン家に仕える有能な執事。

・ゴードン警部補 
ゴッサムシティ警察署に勤務する警部補。

・エドワード・ニグマ 
フィリップの経営顧問として雇われた企業コンサルタント。

・レッドフード
ゴッサムシティを恐怖で支配しようと企むギャング。

アルフレッドやゴードンといった、バットマンシリーズに欠かせない人物との関係や
リドラーこと、エドワード・ニグマ、謎のギャング集団レッドフードとの初遭遇も見逃せません。

それに、バットマンが装備している数々のガジェットも登場し、中にはその使い方を練習している貴重なシーンも垣間見られます。

ストーリーは、前半レッドフードとの対決がメインに描かれ、終盤はリドラーが頭脳戦を仕掛けてきて次巻に続くというワクワクするような構成になっており、過去のエピソードとはいえ、とてもドラマチックに生まれ変わっているという印象を受けました。

また、メインストーリーのあとにはブルースに関する短編が3話とライターのスコット・スナイダーによる『バットマン』#21第1稿も読むことができます。

スナイダーがいわゆる、“焼き直し”となる本書をどのようなコンセプトに基づいて描き上げたのかを知ることができる、重要なポイントとなっております。

本書の続きが気になる、次巻も刊行予定です!
これからバットマンを読まれる方にも、最適な『バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街』は3月6日頃、発売予定です。

アメコミ界不動のアイコンでもある、バットマン。

その新しいゼロイヤーが描かれた本書をぜひ手に取っていただき、ゴッサムに出発してみたらいかがでしょうか。

それではまた次回に。


(文責:渡辺直経)

2015年2月16日月曜日

バットマンがキュートに変身! 『リル・ゴッサム1』

みなさん、こんにちは。

ダークナイトキュート活躍する、話題のコミックの日本版がいよいよ刊行!……というわけで、今回は226ごろ発売予定『バットマン:リル・ゴッサム1』をご紹介させていただきます。

『バットマン:リル・ゴッサム1』
ダスティン・グエン[作・画] デレク・フライドルフス[作]
定価:本体1,800円+税
●2月26日頃発売●
本作はアメリカで201210から翌年12月までデジタルコミックとして発表されたシリーズ(のちに通常のコミックブックとしても発売)の、単行本第1巻。内容はさまざまな祝日をテーマにした短編集で、12話収録の本書を読むと“リル版”ゴッサムシティの1年を楽しめるという、“バットマン暦”とでも呼べる作品です。どんな祝日が取り上げられているかというと……

ハロウィン1031日)→第1話は、いまや日本でもすっかりおなじみになった諸聖人の日。見所はなんといっても仮装! DCのさまざまなキャラの衣装を着た人々(なかには本物も?)で、ゴッサムの通りが溢れかえります。ぜひすみずみまでチェックを!

感謝祭/サンクスギビング・デイ11月の第4木曜日)→感謝祭といえば七面鳥の丸焼き。そしてバットマン系のヴィランで、といえば……。

クリスマス・イブ1224日)→この年のゴッサムはホワイトクリスマス。となると、登場するのはもちろんミスター・フリーズ! このシリーズのフリーズ、ヴィランながら、なんだかほっとけないいじらしさがあります。

大晦日/ニューイヤーズ・イブ1231日)→主役はキャットウーマンポイズン・アイビー、そしてハーレイ・クイン“ゴッサム・シティ・サイレンズ”。お騒がせトリオの年越し女子会は、やっぱり無事にすむはずもなく……。

バレンタインデー214日)→なんと、ジョーカーゴッサム1のモテ男!? ジャスティス・リーグの面々も登場します。

旧正月1月下旬~2月下旬)→アジア系のお祭りということで、アウトサイダーズのカタナが登場して、ダミアンとコンビ結成! 若き日のアルフレッドのサイドキック姿(グリーン・ホーネットのカトー風)も見られます。

聖パトリックの祝日317日)→日本ではあまりなじみがありませんが、アイルランドにキリスト教を広めた聖人を称える祝日です。またの名を緑の日。アメリカで“グリーン”とも呼ばれるドル紙幣が、ゴッサムの銀行から次々に盗まれますが、その背後には……?

イースター/復活祭4月頃の日曜)→キリストの復活を記念する祝日に犯罪を企むのは、『不思議の国のアリス』ネタのヴィランを集めた、マッドハッター率いるワンダーランド・ギャング

4月の雨が5月の花を咲かせる”→この回は、“苦しいことの後には、いいことがある”といった意味の慣用表現にちなんでいます。そして、再びミスター・フリーズが登場! 彼の妻ノーラをめぐる、楽しくもせつないエピソードになっています。

シンコ・デ・マヨ55日)→こちらも日本ではあまりなじみがありませんが、メキシコ系アメリカ人のお祭りです。そんな日にベインが企んでいた悪事とは? メキシコがテーマなだけに、ベインもルチャドール的な仲間を引き連れて登場です。

母の日5月第2日曜日)→ヒーロー好きの少年コリン・ウィルクスは、ある事件がきっかけで自身も怪力ヒーロー“アビューズ”に変身できるようになります。養護施設で育った彼が母親を知らないと聞いた、友達のダミアンは……。

父の日6月第3日曜日)→父親であるゴードン本部長と一緒にディナーを食べようと、レストランに出かけたバーバラ。すると、そこにはもう一組の親子が……。さらに、ウェイン邸でもバットファミリーが集まって父の日を祝おうとしますが……。

本書の作者はダスティン・グエン[作・画]とデレク・フライドルフス[作]。もともとはペンシラーとインカーのコンビで、本作以前は1990年代のアニメ版『バットマン』でおなじみのポール・ディニ脚本による『ディテクティブコミックス』『バットマン:ストリーツ・オブ・ゴッサム』といったシリーズを担当していました。そのせいでしょうか、ポール・ディニ色のようなものが案外強く感じられるのも特色かなと。たとえば、シンコ・デ・マヨ母の日のエピソードに出てくるダミアンの友達コリン・ウィルクスは、上記『ストリーツ・オブ・ゴッサム』で初登場したキャラクターです。また、ダスティン・グエンは新作オリジナルコミック『ディセンダー』(ライターはジェフ・レミア)が、創刊前にソニー・ピクチャーズによって映画化権が取得されて話題になった、今後要注目のアーティストでもあります。

バットファミリーはもちろん、ジョーカーミスター・フリーズベインといったおなじみのヴィランも“リル化”して、ゴッサムシティでてんやわんやの大騒ぎを繰り広げるこの作品、日本ではなかなか紹介される機会の少ないコメディ系コミックに、新しいアプローチで成功した注目作です。メインのユニバースでは重厚でシリアスな物語を身上とするバットマンだけに、いっそう心癒されます……。
本作には2もあります。日本の“水無月”をテーマにした回では東京湾巨大ロボット怪獣が戦ったり、ゴッサムシティのコミコンを舞台にした回があったりと、まだまだ愉快なエピソードが盛りだくさん! さらに、5にはフィギュアメーカーのコトブキヤさんより、『バットマン:リル・ゴッサムミニフィギュア』も発売される予定です(詳しい情報はこちらに)。立体とコミック、両方で展開する“リル”ワールドにぜひご期待ください! 

ところで、“かわいいアメリカン・コミック”といえばもう一つ。100年以上前の作品ながら、華麗かつ緻密な絵柄で後世に絶大なインパクトを残した、かわいくも偉大な名作コミックストリップがあります。そう、昨年小社から日本版が発売された、『リトル・ニモ 1905-1914です。そして、そんな作品を翻訳された海外コミック紹介の第一人者、小野耕世さんが、『リトル・ニモ』の魅力を語る講演会が開催されます。
▲『リトル・ニモ 1905-1914』
ウィンザー・マッケイ[著]
定価:本体6,000円+税
●好評発売中●
『マンガとアニメの天才、ウィンザー・マッケイ~『リトル・ニモ』の魅力に迫る~』
【日時】201537日(土)14:0016:00 (当日の受付開始は1330~)

【会場】千代田区立日比谷図書文化館 地下1階 日比谷コンベンションホール(大ホール)

【参加費用】1,000

【申込方法】電話(0335023340)、Eメール(college@hibiyal.jp)、来館(1階受付)いずれかにて、①講座名(または講演会名)、②お名前(よみがな)、③電話番号をご連絡ください。
小野耕世(おのこうせい):漫画評論家、翻訳家。海外コミックの翻訳出版、研究、紹介の第一人者。国士館大学21世紀アジア学部客員教授、日本マンガ学会理事を務める。2006年に第10回手塚治虫文化賞特別賞を受賞。
小野耕世さんといえば、先日、18回文化庁メディア芸術祭で長年にわたる海外コミックの啓蒙活動が評価され、「功労賞」を受賞されました。その小野耕世さんの最新翻訳書『リトル・ニモ』についての講演会です。ぜひ、この機会に足をお運びください!

ではでは、今日はこんなところで失礼します。 


(文責:中沢俊介)

2015年2月9日月曜日

往年のファン待望!『シャザム!:魔法の守護者』

「アメコミ魂」読者のみなさま、こんばんは!

今回ご紹介するタイトルは、『シャザム!:魔法の守護者』です!

『シャザム!:魔法の守護者』
ジェフ・ジョーンズ[作]
ゲイリー・フランク[画]
定価:本体2,000円+税
●好評発売中●
本書は、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・ランキング1位を獲得した『バットマン:アースワン』のクリエイティブチーム(ジェフ・ジョーンズ/ゲイリー・フランク)による、
DCコミックスの最新シリーズ“ニュー52”からの1作となっております。

「アメコミ魂」の読者さんはご存知かもしれませんが、
シャザムはかつては“キャプテン・マーベル”と呼ばれ、1940年代にはあのスーパーマンに迫る人気を博しながらも、その後権利関係などを理由に、様々な運命を辿った経緯のあるスーパーヒーローです。
その歴史や、キャプテン・マーベルからシャザムへの名称変更については、本書の翻訳者の一人である内藤さんが詳しく解説に書いてくださっていますので、コミックと合わせてシャザムの歴史を紐解いてみるのも面白いかもしれません。

そんなシャザムのオリジンを、現代風に描いた本書のあらすじをご紹介します。

“魔法”が栄えていた時代は終わり、世界は何世紀にもわたって科学に支配されてきた。今、一人の少年によって“魔法”が蘇ろうとしている。

少年の名はビリー・バットソン。15歳のどこにでもいる問題児だ。彼はやさぐれた態度の奥に、善の心を隠し持っていることを見込まれ、古の力を受け継ぐ者として選ばれたのだ。

しかし一方で、古来の眠りより目覚めた邪悪な存在、ブラックアダムがビリーの力を狙っていた。迫り来る脅威に立ち向かうため、ビリーは魔法の言葉“シャザム!”と唱える……すると心は少年のまま、身体は大人のスーパーヒーローへと変身した!
彼は街を、仲間たちを守ることができるのか?

このように、ほかの主なヒーローにはないシャザムの特徴として、心は少年のままで身体は大人へと変わるという点がストーリーに重要な要素として深みを与えています。

最初は、子どもという抑圧から解放されるという気持ちから大はしゃぎするも、
大人という責任感を突きつけられるという事実に、次第に葛藤するビリー。
少年から大人への成長というテーマも、本作品の見どころかもしれません。

旧来のファンにとって、ニュー52シャザムとして、新たに設定されたこともありますので
本書の主な登場人物を簡単にご紹介します。

・ビリー・バットソン
幼いころから両親が行方不明のため、苦労して育った15歳の高校生。

・シャザム
ビリー・バットソンの変身した姿。稲妻を操る魔法の守護者。

・シヴァナ博士
病気の家族を救うために、魔法の復活を目論む科学者。

・ブラックアダム
魔法の戦士。ウィザードによって何千年も封印されていた。

・ウィザード
魔法の砦ロック・オブ・エタニティの番人である魔術師。

そのほか、ビリーにとって大事な家族として登場するのがマリー、フレディ、ペドロ、ユージンにダーラといった5人の兄妹たちです。

ビリー本人と同じく、バスケス夫妻に引き取られた子どもたち。当初は家族になることを、嫌がっていたビリーですが彼らとふれあっていくことで、だんだん本当の家族のようにお互い思えていく展開も、本書のもうひとつの魅力として感じました。

稲妻を操る、魔法の守護者シャザムですが、旧来の設定においてその名前はギリシャ神話に登場する神々と英雄の頭文字から取られており、ソロモンの知恵・ヘラクレスの剛力・アトラスのスタミナ・ゼウスの万能・アキレスの勇気・マーキュリーの神速を授かったとあります。

これで、なぜシャザムというネーミングなのかが少し納得できた気がします。

さらに、強敵ブラックアダムが本書で解放させてしまうヴィランたちの名前は“七つの大罪”に由来しており、それぞれ暴食(グラトニー)・憤怒(ラース)・傲慢(プライド)・嫉妬(エンヴィ)・色欲(ラスト)・強欲(グリード)・怠惰(スロース)となっています。

このように、登場するキャラクターのネーミングにも、それぞれ意味や由来がありそのような視点で見てみるのも、また違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。

本書の舞台は魔法が失われ、科学が支配する現代となっていますが、そんな時代に魔法の守護者としてビリーが選ばれるという展開は「夢を信じる」ということを再び思い起こしてくれます。

魔法の力で空を飛んだり、とてつもないパワーが身についたり、魔法の言葉を発することで変身できるなど誰もがきっと、子どもの頃に夢みたようなことが、要素として凝縮されていて、ついつい引き込まれてしまう魅力がシャザムにはあるように思えます。

また、そんな魅力あふれるシャザムが、2019年公開を目標に映画化の制作が進められているそうです!

人気俳優であるドウェイン・ジョンソンをキャスティングし、シャザム役かブラックアダム役のどっちに配するかという話もあったなか、現状はブラックアダム役で進行しているとのことです。

往年のファンからアメコミ初心者も、時代を超えてここに復活した名ヒーローシャザムをぜひ、本書を手に取っていただき楽しんでいただければと思います。

『シャザム!:魔法の守護者』は、絶賛発売中です! 

それではまた次回に。


(文責:渡辺直経)