2014年10月27日月曜日

初心者歓迎! アベンジャーズ、アッセンブル!

『アベンジャーズ:シーズンワン』
ピーター・デイビッド[著]
アンドレア・ディ・ヴィト他[画]
定価:本体2,000円+税
●10月29日発売予定●
「アメコミ魂」読者のみなさま、こんばんは!

今回、ご紹介するタイトルは『アベンジャーズ:シーズンワン』です!

内容は、マーベルが誇る伝説のスーパーヒーローチーム“アベンジャーズ”が結成された直後の、知られざる秘話が明らかになるというストーリーになっています。

本書は2012年に公開された映画で“アベンジャーズ”を知ったファンを原作コミックにも誘導するというコンセプトから誕生しました。

どこから読み始めれば良いか迷ってしまうアメコミですが、そういったコンセプトから組み立てられた分かりやすいストーリー展開初期エピソードを収録しているという点では、特に初心者にとってはベストな一冊となっているのではないでしょうか。

主に登場するキャラクターは、キャプテン・アメリカアイアンマンソーハルクといった創立メンバーで構成され、ヴィランもロキレッド・スカルミスター・ハイドが大暴れします。
ではそんな人気ヒーローたちが勢揃いする、本書のあらすじを紹介します。

結成間もないアベンジャーズは、謎の存在によって知らぬ間に操られていたのだった。その陰謀者は、チーム間に不信の種を蒔き、アベンジャーズの団結を乱そうとしていた。ハルクはチームから追放され、アベンジャーズはいっそう疑心暗鬼にとりつかれていく……。マイティ・ソー“地球侵略を企む異星人”なのか? キャプテン・アメリカ“稀代の詐欺師”なのか? そして、アイアンマン“敵のスパイ”なのか?
アベンジャーズは、黒幕の正体を暴く前に自滅してしまうのか!? それとも、アベンジャーズの誰かがその企みを見破るのだろうか……物語は予想だにしない方向へと進んでいく――

このワクワクするような展開は、序盤から中盤にかけてはキャプテン・アメリカアイアンマンソーそれぞれの視点でストーリーが進行し、後半はアベンジャーズとしてチームで大活躍するという斬新な構成となっており、きっと一気に読み進められることでしょう。

派手なアクションも満載で、キャプテン・アメリカ VS レッド・スカルアイアンマン VS ミスター・ハイドといったスーパーヒーローとヴィランの戦いや、ソー VS ハルクといった夢の対決も見逃せません!

そしてストーリーの最後には日夜、様々な悪と戦っているスーパーヒーロー同士の会話とは思えないオチもあって、そのギャップも楽しめます。

また、巻末には貴重な資料ページも収録しています。本書の作者であり、80年代から活躍を続けているベテラン・コミックライターのピーター・デイビッドによるアウトライン(あらすじ)と、アーティストのアンドレア・ディ・ヴィトのキャラクター設定画が掲載されています。ペンシルで描かれたこれらの設定画は各キャラクターの容姿がよく分かるように描かれており、ファンにとってはこちらもお楽しみいただけると思います。

それらのペンシル画をよく見てみると、各キャラクターのコスチュームは、映画版とコミック版をミックスした独自のデザインになっていることも興味深いです。まぁ、ハルクは変わらずそのままですが……(笑)

なかでも、最もその見た目に大きな変化があるのはアイアンマンでしょう! 初期の原作コミックでは鉄人28号を思わせるようなシルエットで、目の部分に空いたスリットから外を見ているというコスチュームでした。それが本書では、みなさんもよくご存知のでカラーリングを施したメカニカルな外観と、カメラを搭載したHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)が備わっており、かっこいいアイアンマンが描写されています!
そんな視点で見てみるのも、新しい発見があって面白いですね。

『ホークアイ:マイライフ・アズ・ア・ウェポン』
マット・フラクション[作]
デイビッド・アジャ他[画]
定価:本体2,000円+税
●好評発売中!●
そして、本書には『アベンジャーズ:シーズンワン』に加えて『アベンジャーズ・アセンブル』#1も収録されています。本作は2012年にリニューアルされたアベンジャーズ新シリーズの記念すべき第一話で、このストーリーで主に活躍するのは、ホークアイブラック・ウィドウです。

「アメコミ魂」の読者さんはご存知かと思いますが、あらためてご説明すると、ホークアイとは本名クリント・バートン、弓矢に関しては第一級の腕前を誇るアベンジャーズの一員です。

ホークアイについては、今年8月に刊行しました『ホークアイ:マイライフ・アズ・ア・ウェポン』でもチェックしてみてください。

そしてブラック・ウィドウとは本名ナタリア・アリアノワ・ロマノワ。超人血清のおかげで、若さを保っていられるスパイです。
そんな二人がラトベリアという地で超危険な任務に就くという内容です。緊迫したミッションが進行していくなかで、ところどころにある、“バートン節”に思わず笑ってしまいます。是非、注目してみてください。

ヴィランは、本作が初登場のゾディアックというチーム。元ヒドラ・エージェントや、元ギャングなど、名もなきヴィランたち12人からなる集団で、12星座に由来するパワーをそれぞれ持っているという特徴があります。そのうち、どの星座に由来するパワーの敵が本作には登場するのでしょうか!? 

本書を読んで、子どもの頃、強くてかっこいいスーパーヒーローに憧れたことを思い出しました。大人になった今、そんなヒーローもいつも強いばかりではなく、時には悩んだり仲間を疑ってしまったりする、どこか人間臭いところもきちんと描かれているところを理解した時、彼らをより身近な存在に感じることができたような気がします。

アメコミ愛読者の方はもちろん、初心者の方には入門書として最適な本書をお楽しみいただければと思います。

それではまた次回に。


(文責:渡辺直経)

2014年10月20日月曜日

20周年記念&刊行記念イベントW告知(内輪ネタ注意?)

こんにちは

今週の「アメコミ魂」は、今月25日の「『リトル・ニモ 1905-1914』刊行記念イベント」と来月2日の「ShoPro Books 海外コミックス20周年記念 大感謝祭」の告知をさせていただきます。多少内輪ネタがあると思いますが、ご勘弁ください。

では、まず「ShoPro Books 海外コミックス20周年記念 大感謝祭」の告知をば。
▲グリヒルさん考案の20周年記念オリジナルキャラクター“S-MAN”
1994年5月、小社の海外コミックスは『アンキャニィ・X-メン』『アメイジング・スパイダーマン』の2冊のガイドブック(ムック本)からスタートいたしました。
さらにその年の11月には、小社初のアメコミとなる『X-MEN 1: X-MEN VS MAGNETO (エックス-メン:磁界の帝王マグニートー)』『コナン・ザ・バーバリアン』を同時刊行し、以降、マーベル・コミックスの『X-MEN』シリーズや『マーヴルクロス』、さらにはDCコミックスのバットマン作品やダークホース・コミックスのスター・ウォーズ作品など数々のアメコミを刊行してきました。

先に刊行した2冊のアメコミムック本を考えずに、邦訳アメコミをスタートさせた年月に焦点をあてて考えると、今年2014年11月がちょうど“小プロ”(ここでは“ShoPro”ではなく、あえて昔の略称の表記にいたしますね)二十歳の誕生日(あ、いや「誕生月」か)にあたるのです! そんな記念日にぜひ読者の皆様とお祝いしたい!という趣旨のもと、企画されたものがこの「ShoPro Books 海外コミックス20周年記念 大感謝祭」です。また、20周年を記念して、アメコミファンならご存知のグリヒルさんにオリジナルキャラクター“S-MAN(エス-マン)”を描いていただきました! 今後は販促物や帯にも使用させていただこうと思っております。現在では、「アメコミ魂」のツイッターアイコンにもなっております。グリヒルさん、ありがとうございました!

まだまだ成人式を迎えたばかりではありますが、“小プロ”のアメコミの歴史を振り返ると、輝かしい90年代もありましたが、2000年代に入り、アメコミの出版を一時控えていた時期もありましたね。私どもの努力が足りず、アメコミの出版をいったんお休みさせていただきましたが、いわゆる「アメコミ映画」の興隆も追い風となり、2006年2月に発売した『ヒストリー・オブ・バイオレンス』から本格的にアメコミの出版を再開することができ、以降は、スーパーヒーロー系にとどまらず、非ヒーロー系のグラフィック・ノベルやフレンチ・コミックス(バンド・デシネ)などの海外コミックスを出版し、現在まで200冊以上の作品を刊行することができました。

山あり谷ありの20年間でしたが、ひとえに読者の皆様の支えがあったからこそ継続できたと思っております。ありがとうございました。

「では、11月2日にお会いしましょう!」

▲新宿ネイキッドロフトさんの入口になります
……って、肝心な場所やプログラムについてのお知らせがありませんでしたね……。会場は、20周年を記念するにふさわしい場所、そう、新宿ネイキッドロフトさんです! 『マーベル・キャラクター大事典』の刊行記念イベント以来、ロフトさんとはちょこちょこお付き合いさせていただいており、新宿ロフトプラスワンさんや新宿ネイキッドロフトさんでアメコミ系のイベントをさせていただいた経緯がございます。

記憶に新しいのは、ライターの柳 亨英さんたちが精力的におこなっている「アメコミnight!」内の一企画として、今年3月におこなった「ShoPro Books感謝祭」ですかね。ご来場いただいた皆様はお分かりかと思いますが、「読者に感謝する会」として成立したのか否か……。

▲旧知の仲のブライアン中沢と異動した佐藤学
内輪ネタで恐縮ですが、あのイベントは、とある小社編集部員(このブログ立ち上げ当初の執筆担当佐藤学)がちょうど異動するタイミングに開催されたイベントだったので、個人的にはとても記憶に残っております。「さよなら、○○くん!」みたいな会になってしまい、お恥ずかしいかぎりなのですが、その彼は“超ド天然”な性格だったので、ある意味、会場を沸かせていましたね。素の彼は愛されキャラだったということが判明した瞬間でした……。

不慣れな場で少し無理をしたのか、イベント終了後に見せた、仮面の奥にあった彼の疲れきった顔は、今でも忘れることができません。そのイベントでは、現在、翻訳家/ライターとしても活躍し、小社編集部でも編集として働いている中沢“ブライアン”俊介(「ブライアン・メイと髪形が似ている」ということで…当然本人が承諾している呼称ではありません)との掛け合いもウケていましたね。異動してしまった前述の彼とは「さよなら」しましたので、今回の大感謝祭には一切登場することはないでしょう(笑)。

さて、「ShoPro Books 海外コミックス20周年記念 大感謝祭」のプログラムですが、下記のような構成で進行していこうかと考えております。


18:00 開場 (今回も「来場者全員プレゼント」に力を入れたいと思います!)
19:00 開演 (せっかくなので「20周年を祝して、カンパ~イ」ってやりたいですね)

19:10 第一部 『初代&二代目編集責任者が語るShoPro World Comics』開始
      ※初代編集責任者の山本富洋氏と二代目・橋爪透氏を迎えたトークイベント
      ※橋爪氏がパーソナリティを務める「Radio Butterfly Effect」の皆さんも参加し、公開収録をおこないます。 
       Radio Butterfly Effect」(ラジバタ2)のサイトはこちら
      ※ShoProがアメコミを開始したきっかけや『マーヴルクロス』など初期の制作秘話など、
       スター・ウォーズ・コミックスの話やアーティストとの交流話などが聞けちゃいますよ!
      ※最後に質疑応答もあるかもしれません。

20:30 第一部終了(休憩)

20:45 第二部 『現役編集部員が語るこれからのShoPro Books』開始 
      ※現役編集メンバー総出! 未発表の刊行ラインナップや今後の方向性、
       さらには各編集担当者による今後の一オシ作品も紹介予定。質疑応答など
       読者の皆さまと交流できればうれしいです! 

21:45 プレゼント抽選会 (出版社ならではのプレゼントも……あるかもしれません)

22:00 終演

▲前回のShoProBooks感謝祭(満員御礼!)
……という流れになると思います。

第一部は、小社邦訳アメコミ立ち上げ当初の歴史を大先輩のお二人に真面目に語っていただき、第二部は、現在の編集部員総出で今後の小社邦訳海外コミックスを淡々と語る(?)といった、内容に濃淡のあるイベントになるかもしれません。

「では、11月2日にお会いしましょう!」

……う~ん、先ほどのようにもっと大きな声で告知をしたかったのですが、先週の段階で前売券は完売となりまして(ご予約いただいた皆様、ありがとうございました)、残るは若干名の当日券のみとなってしまいました。当日券もその日に整理券を配布して抽選をおこなうなどとなる可能性がでてまいりました。どのような対応になるのか、「アメコミ魂」のツイッター等でもアナウンスしてまいりたいと思いますので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。また、行きたいのに用事があって行けないという方もいらっしゃると思いますので、翌3日の「アメコミ魂」でイベントリポートを綴ろうと思いますので、興味のある方はぜひご一読ください。今後のラインナップもそこに記したいと思います。

また、このようなイベントが好評であれば、引き続き考えていこうと思いますので、ご声援のほどよろしくお願いします。


さてさて、「ShoPro Books 海外コミックス20周年記念 大感謝祭」の告知が長くなってしまいましたが、最後に今週土曜日におこなう「『リトル・ニモ 1905-1914』刊行記念イベント」の告知を。


10月25日(土)
15:00~19:00 (14:30開場)

於:本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-12-4 2F

藤原カムイ×小野耕世
「ウィンザー・マッケイ没後80年
時代を超えて新しい『リトル・ニモ』の魅力を語る」
 『リトル・ニモ 1905-1914』(小学館集英社プロダクション)刊行記念

前売/席確保(1500yen+500yen/1drink) \2,000

“ウィンザー・マッケイは、『リトル・ニモ』のなかで、ありとあらゆるコミック・ストリップの技法上の実験を、早くもやってしまったのだ。線と色彩、言葉と画面の全体としての新機軸をうちだした。彼は、コミック・ストリップを発見した、というよりほとんど発明したといってもいいだろう。”(『リトル・ニモ 1905-1914』訳者解説より)

ウィンザー・マッケイが亡くなって今年で80年。彼の代表作『リトル・ニモ』は、誕生から100年以上が経っても、世界中のクリエイターに影響を与え続けております。『リトル・ニモ』の翻訳版はいくつかございますが、小社刊のものは、1905年から1914年までの連載を完全収録した決定版です。今年の8月9日頃に出版した作品ではありますが、小社の翻訳版の刊行を記念して、屈指のニモファンとして知られる漫画家の藤原カムイ氏と、本書の訳者であり日本に初めて『ニモ』を紹介した小野耕世氏が「ニモ」の魅力を語ります。ぜひご来場ください。

では、今日はこのへんで。

今後ともShoPro Booksを末永くご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。


(文責:山本将隆)

2014年10月13日月曜日

人気クリエイターコンビの『バットマン』サイドストーリー

こんにちは。

10月に入り、空を見ると気づけば宵闇……という季節になりました。「闇」といえば「闇の騎士」バットマンの出番ですね!(ちょっと強引?!)

今回ご紹介するのは、少し前の2012年に刊行した『キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ』「バットマンシリーズ」の本筋とは異なり、サブキャラクターであるキャットウーマンにスポットを当てたサイドストーリーです。
『キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ』
ジェフ・ローブ[作]
ティム・セイル[画]
高木 亮[訳]
ここ最近ご紹介している、見慣れた『バットマン』のカバーとはテイストが違うの、分かりますか?

カバーフランスのイラストレーター、ルネ・グリュオーの作品へのオマージュで描かれたイラストで仕上げられています。このイラストとともに語られるストーリーは、人気クリエイターコンビジェフ・ローブティム・セイルが手がけたものです。

この名前にピン!ときた方はかなり鋭い感覚の持ち主でしょう。そう、今年7月に刊行した『スパイダーマン:ブルー』クリエイターコンビなのです。

カバーと本編とを描いている人が違う…なんてアメコミも多いのですが、こちらは1冊丸ごとティム・セイルのイラストを楽しめます。

実際に出版された順序としては『スパイダーマン:ブルー』2002年、この『キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ』2004年となっています。
『スパイダーマン:ブルー』
ジェフ・ローブ[作]
ティム・セイル[画]
高木 亮[訳]
アメコミ魂絵本のような名作『スパイダーマン:ブルー』を紹介では、再構成されたストーリーの魅力をご紹介しましたが、そのイラストもとても魅力的でした。この作品では、キャットウーマンの妖艶さも相まって、さらにキャラクターの魅力が引き立っている、というのは言い過ぎでしょうか。

――ゴッサムシティでおきたある事件の最中、
マフィア一家であるファルコーネの屋敷へバットマンが赴く時に
必ずキャットウーマンの姿があった。

しかしある時を境に、キャットウーマンは姿を消す。
彼女はなぜファルコーネ一家の周囲に現れたのか?
その答えは本書を読めば明らかになるだろう――


本書は、『バットマン』サブキャラクターであり、ヒロインの1人でもある「キャットウーマン」の1人称で語られます。紫のスーツに身を包んだ「キャットウーマン」と、本当の姿である美女「セリーナ・カイル」が、訪れたローマ自らのルーツを辿る中で出会う仲間と敵。この作品中のみで登場するキャラクター「クリストファー・カスティロ」と共にストーリーは進んでいきます。

それまでに本筋で登場してきたキャラクターが加わるとちょっとわかりにくくなってしまうものですが、「バットマン」「ジョーカー」は直接ストーリーには関わらないため、ストーリーはこの1冊で完結します。DCコミックスの看板タイトル『バットマン』キャラクターを知る、ということでこれまた強引ではありますが、「アメコミ次の1冊」として選んでいただくのにもオススメしたいと思います

……と、今回ここまで紹介してきたのにはちょっとした理由があります。
先日の『スパイダーマン:ブルー』への読者アンケートでは、ティム・セイルのイラストが初めての方を含めてとても好評だったんです。マーベルの“カラー3作品”はまだ邦訳の予定がないのは恐縮なのですが、既刊で似たような雰囲気を味わえる作品といえば!ということで白羽の矢が立ちました。イラストからコミックを読み始めるのだっていいと思います!

このほかの彼らコンビの作品としては、弊社の邦訳コミックでは同じDCコミックスの『スーパーマン・フォー・オールシーズン』が刊行中! こちらも心温まるストーリーですので、機会あればぜひ手にとっていただけたらと思います。

さて、弊社10月刊行のアメコミでは『バットマン・インコーポレイテッド』も控えています。全世界に広がる犯罪組織に対抗するため、バットマンバットファミリーや世界各地のヒーローたちと協力しながら巨大な悪と戦う!……のですが、その中にはもちろん「キャットウーマン」の姿も。本書のストーリーでは見られない、バットマンと男女の関係?!にもご注目ください(笑)

それではまた次回!


(文責:石割太郎)

2014年10月6日月曜日

伝説の一大巨編『バットマン:ノーマンズ・ランド』始動

みなさん、こんにちは!

アメリカでは先月からテレビドラマ『ゴッサム』の放送が始まりました。ブルース・ウェインが両親を殺された頃のゴッサムシティを描いた群像劇で、ジェームズ・ゴードンをはじめアルフレッドキャットウーマンペンギンリドラーポイズンアイビーといったおなじみのキャラクターが次々と登場し、若い日の姿を見せてくれるこのドラマ、本国でも好調な滑り出しのようです。早く日本でも見てみたい! 『アロー/ARROW『フラッシュ』とはまた違う流れで、実写版DCユニバースを拡張してくれそうです。 

コミックブックのほうでも、本国では今秋『ゴッサム・アカデミー』『アーカム・マナー』『ゴッサム・バイ・ミッドナイト』と、ゴッサムの住民を主人公にした新雑誌が次々と創刊されて、まさにバットマン75周年にふさわしい盛り上がり! 

そんなゴッサムシティの活況に合わせるかのように、日本でも先日ついに『バットマン:ノーマンズ・ランド1』が発売されました! そこで、2012年の映画『ダークナイト ライジング』元ネタの一つにもなった、バットマン史に残る伝説の超大作を、今回は紹介させていただきます。 
▲『バットマン:ノーマンズ・ランド1』
ボブ・ゲイル他[作]
アレックス・マリーヴ他[画]
定価:本体4,200円+税
●好評発売中!●
『ノーマンズ・ランド』1999に、バットマン系列誌を巻き込んで、およそ1年にわたって展開された一大クロスオーバーです。舞台は、大地震によって都市機能が崩壊した後のゴッサムシティ。アメリカ政府からも見捨てられ、無法地帯と化したゴッサムは、独自の秩序を築き上げていきます。そんな街にさまざまな理由で残った住民ヒーローヴィランたちを巡って、重層的に展開される物語。第1巻に収録されたエピソードを、ほんの一部だけご紹介すると……

「無法地帯のルール」……ゴッサムシティが政府によって立入禁止地域に指定されて、3ヶ月が過ぎた。だが、なぜかバットマンはずっと姿を消していた。一方、ライフラインを絶たれた街では、犯罪者たちが縄張り争いを繰り返している。そんなある日、バットマンのコスチュームをまとった謎の女性が現れる。

「恐怖の信仰」……ゴッサムに残った一般市民にとって、教会は数少ない憩いの場である。だが、避難民に混ざって身を寄せていたスケアクロウの求めるものは、“憩い”などではなかった……。

「地獄の歓楽」……街の混乱に乗じて闇市場を築き、暴利をむさぼるペンギン。だが、物品の流通を掌握し、一大勢力となっていた彼に対して、危険なゲームを仕掛ける者が現れる。

「モザイク」……ゴードン本部長率いるゴッサム市警は、秩序の回復を目指し、少しずつ領土を広げていた。そこに襲来するブラックマスクの一団。しかも奴の狙う時計塔には、身動きの取れないバーバラ・ゴードンがいた!

スタート後しばらく経つと、『ノーマンズ・ランド』は全5巻の単行本として、順次まとめられていきました。これだけでも充分大長編ですが、それでも全エピソードの半分ほど(!)。今回の日本版の底本になっているのは、約10年後の2011から本国で刊行された、全4巻の“完全版”です。

両者を簡単に比較してみると……

旧版1999年~2001年刊)
・合計ページ数:1050ページ(全5巻)
・内容『ディテクティブコミックス』『バットマン』『バットマン:レジェンズ・オブ・ダークナイト』『バットマン:シャドウズ・オブ・バット』という、当時のバットマン系レギュラー雑誌を中心に展開された主要エピソード

新版2011年~2012年刊)→今回の日本版に
・合計ページ数:2100ペー(全4巻)
・内容:レギュラー雑誌のなかでも、旧版に収められなかったエピソードに加えて、『アズラエル』『ナイトウィング』『ロビン』『キャットウーマン』など関連誌も網羅

バットマン史的には、これまた映画『ダークナイト ライジング』モデルの一つになった、1993年の大作クロスオーバー『ナイトフォール』(バットマンが半身不随にあたりからの流れの総決算でもあるこの作品、その間には『コンテイジョン』『レガシー』『カタクリズム』といったクロスオーバーがあって、ゴッサムシティは疫病や大地震に襲われるわけですが、そのあたりの流れも、翻訳を担当された高木亮さんによる解説でばっちりフォローされているのでご安心を。ちなみに、この時期のバットマンコミックとしては、『バットマンvs.ベイン』が小社から刊行されています。 
▲『バットマン vs. ベイン』
チャック・ディクソン他[作]
グラハム・ノーラン他[画]
そして、本作から本格的にバットマンを手がけるようになった小説家のグレッグ・ルッカが、エド・ブルベイカーとともに、2000年代前半のクライムフィクション色の強い展開を牽引していくことになります。 

本巻の個人的なおすすめエピソードは、ヴィランたちの縄張り争いに翻弄される退役軍人の頑固おやじを描いた「安らぎの我が家」。作画はのちに『ヘルボーイ』のスピンオフB.P.R.D.を手がけるガイ・デイビスが担当。ヒーローとヴィランの戦いだけでなく、市井の人々の多彩な人間模様を読むことで、脳内にゴッサムシティが立ち上がっていくような感覚が味わえるのが、本作の特徴の一つかなと。あと、『バットマン:ハッシュ完全版』をお読みいただいた方には必読のエピソードもあります! 
 皆様にぜひじっくり読んでいただきたい『ノーマンズ・ランド』第2巻の発売はもう少し先になります。今月末に発売されるのは、グラント・モリソン『バットマン・アンド・サン』以来つづってきた新サーガクライマックスの幕開けとなる『バットマン・インコーポレイテッド』。そちらのほうもお楽しみに! 

ではでは、今回はこのへんで失礼いたします。


(文責:中沢俊介)