2014年1月13日月曜日

新刊『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』を語る

こんにちは!

今回は、1月29日頃発売予定、ただいま絶賛予約受付中の『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』の紹介をしたいと思います。原題を訳すと「バットマン:カウル争奪戦」、カウルとは聖職者が纏う丈の長いフード付きマントのことで、ここではバットマンスーツを指しており、そのスーツを誰が受け継ぐのか、バットマンの後継者をめぐる争いという内容を表したタイトルになります。

▲『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』(日本語版)
最近、先月発売した『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』を読んでいただいた読者さんのなかには「え!? バットマンの後継者争いって、ブルース・ウェインはどうしたの?」と思った人もいるかもしれません。もちろん、バットマンといえばブルース・ウェインなのですが、今年で75周年を迎えるバットマン(昨年はスーパーマンが生誕75周年でした)の長い歴史のなかではいろんなことが起きていたんですよね(笑)。ですので、『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』を紹介する前に、その前の物語をちょっとだけ説明したほうがいいかもしれませんね。

ShoPro Booksでは、ちょうど2年前の2012年2月末、『スーパーゴッズ アメリカン・コミックスの超神たちの著者グラント・モリソンがライターを務めた『バットマン・アンド・サン』を手始めに、モリソンが描く新たなバットマン・サーガの日本語版に着手しました。

本シリーズは、アメリカでは2006年から連載が開始され、「バットマンと息子」の表題どおり、バットマンの息子ダミアンが初登場(厳密にいえば、日本語版に収録されている元ネタがあるので再登場とも)し、新たな冒険が始まっていくという「バットマン」誌における重要なシリーズになります。

最近、“ニュー52”シリーズ(現行の一番新しいシリーズ)やアースワン(別世界の話)などさまざまなバットマン作品を邦訳しているので、少し混乱されるかもしれませんが、モリソンがライターに就任した「バットマン」作品は現行のニュー52よりも5年前に発表された作品になります。

このモリソンが描いていた新しいバットマン・サーガは、大きく分けると3部構成になり、そこそこ長丁場なシリーズになります。まず第1部が前述の『バットマン・アンド・サン』(バットマンの息子ダミアンが現れる)から始まり、『バットマン:ラーズ・アル・グールの復活』(こちらの作品はサイドストーリー集的な扱いかも)、『バットマン:ブラックグローブ』(かつてバットマンが所属していたヒーロークラブの面々が謎の組織ブロックグローブに命を狙われる)、『バットマン:R.I.P.』(ブラックグローブの黒幕が登場。ブルースはゴッサムから姿を消す)と続いた作品群。そして次の第2部は『WE3 ウィースリー』でもタッグを組んだグラント・モリソン&フランク・クワイトリーの『バットマン&ロビン』(小社より2月刊行予定)を中心とした作品群。さらには第3部の『バットマン:インコーポレイテッド』へと続きます。
http://books.rakuten.co.jp/rb/11554336/
▲『バットマン・アンド・サン』(絶賛発売中)
http://books.rakuten.co.jp/rb/11643676/
▲『バットマン:ブラックグローブ』(絶賛発売中)
http://books.rakuten.co.jp/rb/11693516/
▲『バットマン:R.I.P.』(絶賛発売中)
では、本題の『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』はどの位置にあるお話なのか?

このエピソードは、前述のグラント・モリソンによるバットマン・サーガの第1部(『バットマン・アンド・サン』『バットマン:R.I.P.』)と、第2部『バットマン&ロビン』の間におきた出来事を描いたものになります。ちょうど両者の懸け橋となる作品になります。

ブルースが第1部の最後で“死亡”して(実際は、未邦訳の『ファイナル・クライス』にてダークサイドの光線オメガ・エフェクトを浴びて“死亡”)、ゴッサムから姿を消します。そして第2部の『バットマン&ロビン』では、“あるキャラクター”と“あるキャラクター”が“バットマン&ロビン”となって活躍するのですが、この『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』では、その“あるキャラクター”バットマンになるための決意を固めるという第2部の序章にあたる作品です。バットマンの邦訳も増えていき、どのエピソードがどのエピソードに繋がっているのかなどが分からなくなってきている方も多いかと思いますので、今回の『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』の巻末付録では、通常の解説用語解説のほかに、年表「バットマン タイムライン」「『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』以前以後」と題したバットマンのエピソードが把握できる詳細な解説を掲載しています。今後、邦訳版バットマンを読むにあたって、とても役立つ資料だと思いますのでご期待ください。

ちなみに『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』は、『バットマン・アンド・サン』が連載開始される約1年前の作品にあたります。ですので、『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』よりずいぶん前の物語になりますね。さらに『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』にも『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』にもブラックマスクが登場します。描いているアーティストやライターの違いからか、『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』に登場するブラックマスクは少しお茶目なところもあるのですが、『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』に登場するブラックマスクはより残忍でクールな印象があります。実はアーティストやライターの違いだけではなく、中身が違うんですよ! 二代目ブラックマスクとでも申しますか、そのあたりも解説に記載しているのでお楽しみください。『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』ではじめてブラックマスクに触れた読者さんがちょっとびっくりするんじゃないかなと思い、このブログでも書いてみました。解説が充実しているので、『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』単体でも楽しめますが、今回挙げた作品を読んだ後だとさらに楽しめると思います。


最後に『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』のあらすじを少々。

バットマン不在のゴッサムシティは荒れており、犯罪が多発していた。それを見兼ねたナイトウィングことディック・グレイソンは、ロビンたちを招集する。三代目ロビンのティム・ドレイクとスクワイア(『バットマン:ブラックグローブ』参照)は、凡庸な三人組のギャングを追跡していた。その三流ギャングは、ありきたりの廃病院へと逃げ込み、ロビンたちも彼らを追いかけた。銃声が響いた病室の中に入ると、その三人組はすでに倒されていた。ロビンは一枚のメモを片手にひと足違いだったと気づく。そのメモには「我こそはバットマンなり」と書かれていた……。

(もうすでにお気づきかもしれませんが……汗“バットマン”を名乗る謎のバットマンとは何者なのか?

初代ロビンにして現ナイトウィングのディック・グレイソン、三代目ロビンのティム・ドレイク、バットマンの息子ダミアン、そして、謎のバットマン……さらにキャットウーマンオラクルバーズ・オブ・プレイなども登場。ブラックマスクトゥーフェイスペンギンポイズン・アイビーキラークロックリドラーなど様々な強敵たちも……はたしてこのなかでバットマンを継ぐ者は誰なのか? ぜひお楽しみに。

『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』は、ブルース不在のためブルースの出番は少ないのですが、歴代ロビンファンにとっては堪らないエピソードだと思います。それぞれのロビンに見せ場があり、それぞれの立場でお互いを思い、葛藤している様が描かれています。また2月刊行予定の『バットマン&ロビン』を読むうえでも大切な序章にあたる作品です。『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』には、表題作のほか「ゴッサム・ガゼット:バットマン死亡か」「ゴッサム・ガゼット:バットマン生存か」2篇の短編も同時収録しております。その短編に四代目ロビンだったこともあるステファニー・ブラウンが登場します。多くのキャラクターを理解することができるのも本作の特徴だと思います。

今回はここまで。来週の『アメコミ魂』はお休みします。内容を少しずつブラッシュアップしていこうと考えておりますので、そのためのお時間を少々いただきます。今後ともよろしくお願いします!

ではまた!


(文責:山本将隆)