2013年12月26日木曜日

取材「アディ・グラノフ氏来日」

こんにちは!

小社で刊行している「スパイダーマン」シリーズ、ご存知ですか?
50年以上の歴史をもつ超長期連載のため、どこから手をつけて、何を読めばいいのかサッパリわからないのがアメコミの人気作ならではの悩みどころです。しかし、下記の順番で読んでいただければ、「映画で見たことがあるかも」くらいの知識でも充分にコミックのスパイダーマンの世界を楽しんでいただけるはず! ぜひ、この年末年始にお手にとっていただけると幸いです!!

スパイダーマンの長い歴史を大きく揺るがす出来事が起き、全米のコミックファンを震撼させたスパイダーマン:ワン・モア・デイ。そのショッキングな展開ゆえに、超問題作と呼ばれています。
上記の“ワン・モア・デイ”で起きた事件により、複雑な設定の多くがリセットされ、初心者でも読みやすい新シリーズスパイダーマン:ブランニュー・デイ 1が始まります。『スパイダーマン:ブランニュー・デイ 2では人気キャラのウルヴァリンと共闘したり、スパイダーマン:ブランニュー・デイ 3では映画でもおなじみのメリー・ジェーンも登場しますが、基本的にはピーター・パーカーの日常を舞台に新しく登場した新たな敵たちとの戦いを描きます。
物語が大きく動き出したのが、今年10月から刊行した下記の3作。
スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイでは、ついにスパイダーマンの最凶の宿敵であるノーマン・オズボーン(グリーン・ゴブリン)が登場します。この刊には後述するアディ・グラノフさんが描かれた短編も収録! 続く、スパイダーマン:エレクション・デイでは、“ブランニュー・デイ”開始時から張り巡らされてきた様々な謎の多くが明かされます。さらには、カバーイラストのとおり、オバマ米大統領とスパイダーマンの共演を描いた短編も収録されています。この12月に刊行されたばかりのスパイダーマン:アメリカン・サンでは、ノーマン・オズボーンとの戦いに一つの決着が……!? ぜひ、最高潮に盛り上がるストーリーをお楽しみください。

そして、今回の当ブログには、この3作品の翻訳を担当していただいた光岡三ツ子さんにご寄稿いただいたアディ・グラノフさんへのインタビューを掲載します。ここでしかもらえない“特別プレゼント”もありますので、ぜひコミックと合わせてお楽しみください!!


■アンディ・グラノフ氏インタビュー
去る10月、マーベルで最も人気のあるアーティストのひとりであり、映画『アイアンマン』シリーズのコンセプト・デザイナーとしても有名なアディ・グラノフさんが「海外マンガフェスタ」のゲストとして来日されました。

アディ・グラノフさんはコトブキヤ様が来年から発売する新シリーズ「ARTFX+ アベンジャーズ MARVEL NOW!」のデザインも手がけていらっしゃいます。そのコトブキヤ様の取材に紛れ込む形で、コミックについてのお話も伺ってきました!

アディ・グラノフさんのマーベルでの活躍は表紙アートやギャラリー・アートが中心で、中のコミックページを描かれることはあまりありません。代表作『アイアンマン:エクストリミス』以降に手がけた貴重なコミックのひとつは、スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイにヴェノムのミニエピソードとして収録されています。
アディ・グラノフさん。
『スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイ』邦訳版と共に。
――『スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイ』に収録された、あなたがアートを手がけた「第5ステージ」についてお聞かせください。少し前の作品(註:アメリカでの出版は2008年)なのですが。
最近のお仕事では表紙が多くて、コミックの中身を描かれることが少ないと思うのですが、このコミックはどういう経緯で描かれることになったのですか。

アディ・グラノフ:スパイダーマンの編集者のスティーブ・ワッカーと僕は良い友人で、それで声がかかったのです。僕はページ物のコミックを描くのは好きなのですが、時間の余裕がないんです。しかしこの時はタイミングがよく少し時間がありました。それにアイアンマンの仕事や、他の作品でも忙しかったので、気持ちを変えるためにやったというところもあったんです。
そしてもちろん、ライターのマーク・ウェイドのファンだったということもありました。人間らしいドラマで、少しホラー表現が入っているような話は描いていて楽しかったし、アイアンマンの仕事から気持ちを切り替えるには本当にいい仕事だったと思います。

――今後またコミックを描かれる予定はあるのでしょうか。

アディ・グラノフ:私は一枚当たりの絵にとても時間をかけるので、時間がいつも足りないんです。でもタイミングがあえばこのようなショートストーリーは手がけたいと思っています。今までにはダーク・アベンジャーズのドクター・ドゥームの話(「Dark Reign: The Cabal」#1/2009年)とか、スチームパンク風のX-MENの話(「X-Men Unlimited Vol.2」#2/2004年)などの短いページを描きました。今後やるとすればやはり、こういう風なショートストーリーか、または本格的な自分のオリジナルを手がけたいと思っています。

――ジョン・ファブロー監督がストーリー、あなたがコミック・アートを手がける『Iron Man: Viva Las Vegas』というタイトルの出版予定がだいぶ前にありましたが、その後、どうなっているのか聞いてもいいですか?

アディ・グラノフ:彼がストーリーを描いた部分のアートは仕上げたのですがその後が止まっていますね。彼は映画の仕事があり、とても忙しい人なので。しかし、ハリウッドの人と働くというのはそういうことなんだと思いますよ。

――(コトブキヤ「ARTFX+ アベンジャーズ MARVEL NOW!」のデザインに関して)
このキャプテン・アメリカのデザインは今風ですね。

アディ・グラノフ:もともとのマーベルNOW!のキャラクターのデザインは中のコミックを描くアーティストが作りました。アメリカのコミックではキャラクターのデザインはインテリアを描くアーティストが描くことが多いのです。
今の世代のアーティストは皆、デザインにリアリティを取り入れています。これは誰が始めたことか知りませんが、キャプテン・アメリカの衣装を描くときにはこういう風にバイクのジャケットのデザインを取り入れることが多いのですね。このデザインもそうなっています。
私が常に仕事をするときに意識するのは、実際に存在しているか、存在しえるデザインにしたいということです。そういう風に考えるようになったのは日本のマンガの影響がすごく強い。その影響でロジカルなデザインを考えるようになりました。自分と同世代の作家たちもおそらくそうだと思います。

――個人的に、コミックのコスチュームにリアリティを持ち込んだことについてはアルティメッツの影響があると思うのですが、アーティストのブライアン・ヒッチに影響された部分などはありますか。

アディ・グラノフ:あるとしても、少しですね。ブライアン・ヒッチのデザインは科学的に正しいデザインなのだと思います。アイアンマンは巨大で被るようなデザインになっていたりしますね。しかし自分のアプローチとしては、科学的な正しさの他にもヒーローらしさを見せる部分が重要だと思っているのです。ヒーローとしての見栄えを大事にしながらリアリティを追求するということですね。
(「ARTFX+ アベンジャーズ MARVEL NOW!」のデザインを見ながら)このソーのヘルメットも羽根がついていますね。これは実用ではおかしいかもしれないですがヘルメットとしてはちゃんと被れるというデザインで、そしてソーのアイコニックなイメージが強調されているのです。
このキャプテン・アメリカのコスチュームも実際に防御力が強いわけではないかもしれないけど、ヒーローらしさを重視して描いています。
コミックのヒロイックなイメージとリアリティの中間地点で描くのが僕のやり方ですね。

――ありがとうございました。

コトブキヤ「ARTFX+ アベンジャーズ MARVEL NOW!」のデザインについてのお話や、映画製作での役割、アイアンマンのアーマーについての考え方など、興味深い話がいっぱいのインタビュー全文は「ハイパーホビー」1月号(徳間書店)に掲載されています。ぜひご覧下さい!


取材協力:柳亨英、株式会社壽屋、ハイパーホビー



(編集担当:佐藤学)