2013年12月26日木曜日

取材「アディ・グラノフ氏来日」

こんにちは!

小社で刊行している「スパイダーマン」シリーズ、ご存知ですか?
50年以上の歴史をもつ超長期連載のため、どこから手をつけて、何を読めばいいのかサッパリわからないのがアメコミの人気作ならではの悩みどころです。しかし、下記の順番で読んでいただければ、「映画で見たことがあるかも」くらいの知識でも充分にコミックのスパイダーマンの世界を楽しんでいただけるはず! ぜひ、この年末年始にお手にとっていただけると幸いです!!

スパイダーマンの長い歴史を大きく揺るがす出来事が起き、全米のコミックファンを震撼させたスパイダーマン:ワン・モア・デイ。そのショッキングな展開ゆえに、超問題作と呼ばれています。
上記の“ワン・モア・デイ”で起きた事件により、複雑な設定の多くがリセットされ、初心者でも読みやすい新シリーズスパイダーマン:ブランニュー・デイ 1が始まります。『スパイダーマン:ブランニュー・デイ 2では人気キャラのウルヴァリンと共闘したり、スパイダーマン:ブランニュー・デイ 3では映画でもおなじみのメリー・ジェーンも登場しますが、基本的にはピーター・パーカーの日常を舞台に新しく登場した新たな敵たちとの戦いを描きます。
物語が大きく動き出したのが、今年10月から刊行した下記の3作。
スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイでは、ついにスパイダーマンの最凶の宿敵であるノーマン・オズボーン(グリーン・ゴブリン)が登場します。この刊には後述するアディ・グラノフさんが描かれた短編も収録! 続く、スパイダーマン:エレクション・デイでは、“ブランニュー・デイ”開始時から張り巡らされてきた様々な謎の多くが明かされます。さらには、カバーイラストのとおり、オバマ米大統領とスパイダーマンの共演を描いた短編も収録されています。この12月に刊行されたばかりのスパイダーマン:アメリカン・サンでは、ノーマン・オズボーンとの戦いに一つの決着が……!? ぜひ、最高潮に盛り上がるストーリーをお楽しみください。

そして、今回の当ブログには、この3作品の翻訳を担当していただいた光岡三ツ子さんにご寄稿いただいたアディ・グラノフさんへのインタビューを掲載します。ここでしかもらえない“特別プレゼント”もありますので、ぜひコミックと合わせてお楽しみください!!


■アンディ・グラノフ氏インタビュー
去る10月、マーベルで最も人気のあるアーティストのひとりであり、映画『アイアンマン』シリーズのコンセプト・デザイナーとしても有名なアディ・グラノフさんが「海外マンガフェスタ」のゲストとして来日されました。

アディ・グラノフさんはコトブキヤ様が来年から発売する新シリーズ「ARTFX+ アベンジャーズ MARVEL NOW!」のデザインも手がけていらっしゃいます。そのコトブキヤ様の取材に紛れ込む形で、コミックについてのお話も伺ってきました!

アディ・グラノフさんのマーベルでの活躍は表紙アートやギャラリー・アートが中心で、中のコミックページを描かれることはあまりありません。代表作『アイアンマン:エクストリミス』以降に手がけた貴重なコミックのひとつは、スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイにヴェノムのミニエピソードとして収録されています。
アディ・グラノフさん。
『スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイ』邦訳版と共に。
――『スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイ』に収録された、あなたがアートを手がけた「第5ステージ」についてお聞かせください。少し前の作品(註:アメリカでの出版は2008年)なのですが。
最近のお仕事では表紙が多くて、コミックの中身を描かれることが少ないと思うのですが、このコミックはどういう経緯で描かれることになったのですか。

アディ・グラノフ:スパイダーマンの編集者のスティーブ・ワッカーと僕は良い友人で、それで声がかかったのです。僕はページ物のコミックを描くのは好きなのですが、時間の余裕がないんです。しかしこの時はタイミングがよく少し時間がありました。それにアイアンマンの仕事や、他の作品でも忙しかったので、気持ちを変えるためにやったというところもあったんです。
そしてもちろん、ライターのマーク・ウェイドのファンだったということもありました。人間らしいドラマで、少しホラー表現が入っているような話は描いていて楽しかったし、アイアンマンの仕事から気持ちを切り替えるには本当にいい仕事だったと思います。

――今後またコミックを描かれる予定はあるのでしょうか。

アディ・グラノフ:私は一枚当たりの絵にとても時間をかけるので、時間がいつも足りないんです。でもタイミングがあえばこのようなショートストーリーは手がけたいと思っています。今までにはダーク・アベンジャーズのドクター・ドゥームの話(「Dark Reign: The Cabal」#1/2009年)とか、スチームパンク風のX-MENの話(「X-Men Unlimited Vol.2」#2/2004年)などの短いページを描きました。今後やるとすればやはり、こういう風なショートストーリーか、または本格的な自分のオリジナルを手がけたいと思っています。

――ジョン・ファブロー監督がストーリー、あなたがコミック・アートを手がける『Iron Man: Viva Las Vegas』というタイトルの出版予定がだいぶ前にありましたが、その後、どうなっているのか聞いてもいいですか?

アディ・グラノフ:彼がストーリーを描いた部分のアートは仕上げたのですがその後が止まっていますね。彼は映画の仕事があり、とても忙しい人なので。しかし、ハリウッドの人と働くというのはそういうことなんだと思いますよ。

――(コトブキヤ「ARTFX+ アベンジャーズ MARVEL NOW!」のデザインに関して)
このキャプテン・アメリカのデザインは今風ですね。

アディ・グラノフ:もともとのマーベルNOW!のキャラクターのデザインは中のコミックを描くアーティストが作りました。アメリカのコミックではキャラクターのデザインはインテリアを描くアーティストが描くことが多いのです。
今の世代のアーティストは皆、デザインにリアリティを取り入れています。これは誰が始めたことか知りませんが、キャプテン・アメリカの衣装を描くときにはこういう風にバイクのジャケットのデザインを取り入れることが多いのですね。このデザインもそうなっています。
私が常に仕事をするときに意識するのは、実際に存在しているか、存在しえるデザインにしたいということです。そういう風に考えるようになったのは日本のマンガの影響がすごく強い。その影響でロジカルなデザインを考えるようになりました。自分と同世代の作家たちもおそらくそうだと思います。

――個人的に、コミックのコスチュームにリアリティを持ち込んだことについてはアルティメッツの影響があると思うのですが、アーティストのブライアン・ヒッチに影響された部分などはありますか。

アディ・グラノフ:あるとしても、少しですね。ブライアン・ヒッチのデザインは科学的に正しいデザインなのだと思います。アイアンマンは巨大で被るようなデザインになっていたりしますね。しかし自分のアプローチとしては、科学的な正しさの他にもヒーローらしさを見せる部分が重要だと思っているのです。ヒーローとしての見栄えを大事にしながらリアリティを追求するということですね。
(「ARTFX+ アベンジャーズ MARVEL NOW!」のデザインを見ながら)このソーのヘルメットも羽根がついていますね。これは実用ではおかしいかもしれないですがヘルメットとしてはちゃんと被れるというデザインで、そしてソーのアイコニックなイメージが強調されているのです。
このキャプテン・アメリカのコスチュームも実際に防御力が強いわけではないかもしれないけど、ヒーローらしさを重視して描いています。
コミックのヒロイックなイメージとリアリティの中間地点で描くのが僕のやり方ですね。

――ありがとうございました。

コトブキヤ「ARTFX+ アベンジャーズ MARVEL NOW!」のデザインについてのお話や、映画製作での役割、アイアンマンのアーマーについての考え方など、興味深い話がいっぱいのインタビュー全文は「ハイパーホビー」1月号(徳間書店)に掲載されています。ぜひご覧下さい!


取材協力:柳亨英、株式会社壽屋、ハイパーホビー



(編集担当:佐藤学)

2013年12月23日月曜日

寄稿「邦訳コミックで追うロビンの活躍」

こんにちは!

今回は、読者さんに小社刊行物を紹介していただくという企画の第1弾です。

第1回目は、ロビンファンを自認する、ペンネーム「関西のS」さんに『ShoProさんの邦訳コミックで追えるロビンの活躍についてまとめてみた』というお題で、ロビンたちが登場するバットマン作品を紹介していただきます。では、よろしくお願いします!


はじめまして、関西のSです。

さて、『ロビン:イヤーワン』『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』の発売と、来月発売予定の『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』、さらに発売が予告されている『バットマン&ロビン』。これらが日本語版で刊行されることによって、「歴代ロビンのファンたちが邦訳本を読む順番」について、わかりやすく説明することができるようになりました!

まず10月末に発売された『ロビン:イヤーワン』。初代ロビンことディック・グレイソンの、ロビン1年目のストーリーです!

健気で可愛く逞しい、ディックの頑張る姿と、ブルースの不器用な愛情。その二人を見守るアルフレッドと、ゴードン氏。個性溢れる有名ヴィランも続々登場で、スッキリとしたカトゥーン風のアートが前向きな少年の物語にマッチして、アメコミ初心の方にも入りやすい一冊となっております。


そして、お次は二代目ロビンの悲劇三代目ロビンの登場を描いた不朽の名作『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』

80年代のアメコミらしいアートで文字も細かく、原書で読むのは大変な作品ですが(笑)、押さえておきたい大事な一冊です。せっかく日本語で読めるのに、読んでおかないのは勿体ないと思います!

19歳になったディックにも、独り立ちの日がやってきます。ロビンを卒業し、ナイトウィングというヒーローに育ったディック。しかしバットマンは、ロビンの存在なしではやっていけませんでした。彼の孤独は、ディックの不在にもう一人の少年をロビンにしてしまいました。名前はジェイソン・トッド。不良少年だった彼を二代目ロビンにしたのですが、ブルースは大変な間違いを犯してしまったのです。ブルースは、初代ロビンのディックを危険から遠ざけたくて、「ロビンを辞めろ」と迫りました。なぜならば、ディック・グレイソンは一人しかいないから……。しかし、ジェイソン・トッドも一人しかいなかったのです……。

とある事件(『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』を読んでください!)でジェイソンを失ったバットマンは、日に日に病んでいきます。謎の少年ティム・ドレイクは、バットマンの姿を見かねて、ディック・グレイソンのもとを訪れました。「バットマンを助けるために、ロビンに戻って!」ティムはディックに懇願しました。その願いは叶うことはなかったのですが、その天才的な推理力でバットマンとロビンの正体、そしてジェイソンの死を突き止めたティムは、『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』収録の「ロンリー・プレイス・オブ・ダイイング」から、20年の間、三代目ロビンを務めることになります。その経緯と、そして「不良だけど、母親思いのとてもいい子だった」ジェイソンの感動の物語の実態はぜひ、本書をじっくりとお読みくださいませ!


それから時は流れ、ディックとブルースの確執も解消し、バットマンとナイトウィング、三代目ロビンの安定した期間が続いていました。そこへ突如現れた謎の包帯男、ハッシュ……! 完全版で改めてお目見え、『バットマン:ハッシュ 完全版』です!

こちらは巨匠ジム・リーの、骨太でいて繊細なアートが神がかって美しく、画集としての価値もある、宝箱のような一冊です。もう、これは永久保存推奨ですよ! ハッシュがバットマンを陥れるための卑劣な罠……それは、死んだはずの相棒ジェイソン・トッドの……(以下ネタバレにつき自主規制)。未読の方は、『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』を読む前に絶対ぜったい読んでくださいね! バットファミリーを襲う、哀しく卑劣な悲劇。ジェイソンの存在は、このあと……!?


そして、その謎を追う問題作こそが……今月発売された『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』です!

ジェイソンファンの皆様、お待たせいたしました! ずっと日本語版の発売を焦らされていたので、待ち遠しかったですね。本作はOVA(日本未発売)にもなっているので、ロビンファンのなかでは有名な作品だと思います。しつこいようですが、『バットマン:ハッシュ 完全版』を入手した方は、読みたくなること間違いなしです! 『バットマン:ハッシュ 完全版』を読んで、あのJ(ジョーカーではない)はなんだったんだ? 解説はないのか?と思ったはずですが、その答えが『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』にありますのでご安心ください。


そして、既刊の『バットマン・アンド・サン』。ブルースの実子、ダミアンの衝撃デビュー作です。
新シリーズ、ニュー52の「梟」三部作で、ダミアンをご存知の方は、ぜひ彼の登場作もご覧ください。びっくりするほど、「にくそい」(注:標準語では「憎らしい」ですかね)です(笑)。

また本書には、黒歴史(?)とされたバットマンの息子、本当の初登場である「バットマン:サン・オブ・デーモン」も収録されております。ちなみにこの作品は初のグラフィックノベル(読みきりの単行本)作品といわれています。

三代目ロビンであるティムに真っ向から対抗する少年ダミアンは、ラーズの孫であり、タリアの息子。『バットマン:ラーズ・アル・グールの復活』では、バットマンが養子と実子、どちらを選ぶか……!?というテーマ(?)とともに、徐々にダミアンはバットファミリーに受け入れられていきます。
ナイトウィングは、安定の“みんなのお兄ちゃん”ですが、実の父親やガールフレンドのステファニー、そして親友のスーパーボーイを次々と失ったティムは、ダミアンの登場とともに不安定になっていき……!?


そんなところに大事件が勃発! まさかの「ブルース・ウェイン死す!」
『バットマン:R.I.P.』は、このタイミングで必読になります! バットマンを狙う強敵ブラック・グローブについては、この前の作品『バットマン:ブラックグローブ』を併せてお読みいただくとなおベターです!


ディック、ティム、ダミアン、アルフレッドに降りかかる、ブルースの死。
彼の死を噛み締めることができる『バットマン:ザ・ラスト・エピソード』は、直接本編に関係はないものの、60年代ドラマを始めとするバットマンシリーズすべてをネタに盛り込み、コアなバットマンワールドファンの方も唸らせる内容になっております。



そして来月刊行予定の『バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル』。こちらはブルース亡きあと、このゴッサムで「バットマン」という存在をどうするか。彼を死なせてはならない。バットマンの伝説を終わらせてはいけない。そう考える歴代ロビンたち、全員が活躍する物語になります。ブルース・ウェインのバットマンが死んで、ゴッサムのヴィラン達は、スーパーマンやJLAのヒーロー達はどうしたか。それはまたいろいろ、別の物語がありますが、ブルースの息子達がどうするかは、この一冊で語られます。

 その結論が集約したのが、グラント・モリソンの集大成『バットマン&ロビン』
さあ、この本が出るまでに、この刊行ラインナップを是非読み進めてくださいませ。敵も味方も、バッチリ飲み込んでからのこの本は、きっと極上の面白さでご賞味いただけますよ~!!



今回は第1弾ですが、今後も「アメコミ魂」に寄稿していただける読者を募集いたしております。残念ではありますが、なんでも自由なレビューをというのではなく、当面は小社刊行物に限ったレビューをお待ちしております。我こそは!という方は、ブログ下段にある「メッセージを送る」にご一報ください。お待ちしております。

ではまた!


(編集担当:山本将隆)

2013年12月16日月曜日

新刊『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』を語る

こんにちは!

今回は、12月18日(水)頃に発売する『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』を紹介いたします

赤い仮面の下にある真実とは?――突如ゴッサムシティに現れた謎の男レッドフード。彼は敵なのか、味方なのか……。本書の原書を読んでいない人でも、バットマンファンならこの物語の主人公レッドフードの正体は誰だかおわかりだと思います。

告知するうえでどこまでネタバレさせてもいいのか、アメコミの過去作品の邦訳版を刊行するときにいつも迷います。すでに原書が出てから何年も経っていて、あらゆるサイトで様々な情報も掲載されているし、ファンなら当然知っているからここまではいいだろう……と思って告知してしまうと、「ネタバレ」だとお叱りを受けることもしばしば……。

ですので、ここでは発売までその正体は伏せておきましょう(笑)。まあ、すでに弊社サイトやネット書店さん等での内容紹介では少しだけ情報を出しておりますし、他作品の解説でも少し内容に触れられているので、その正体を知る人も多いのですが、知っていたとしてもこの作品は充分楽しめますのでご安心ください!

本書を読む前に読んでいただきたいのが、この二作品。まずは、『バットマン:デス・オブ・ザ……』じゃなくって(笑)、『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』。この作品はロビンファンには読んでいただきたい単行本です。

なぜならば、非業の死を遂げた二代目ロビンであるジェイソン・トッドの物語と三代目ロビンとして活躍しようとするティム・ドレイクの話が収録されており、まさにロビンの代替わりの流れがこれ一冊でわかる作品となっております。実はこの『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』は、読者アンケートで『バットマン:ノーマンズ・ランド』に匹敵するぐらいの刊行希望作品でした。『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』を機にさらに注目されて欲しいですね。


もう一作品は、『バットマン:ハッシュ 完全版』。ちょうど単独誌初邦訳で盛り上がった『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』と同じ発売日だったので、少しデップーさんの陰に隠れてしまった感じはありますが、変わらずの高評価で、今も売れ続けています。

この『バットマン:ハッシュ 完全版』に登場する謎の包帯男ハッシュなんですが、彼はバットマンの前で正体を現します。包帯がハラハラとはがれていき、なかから出てきた人物がバットマンにゆかりある人物だったのです……。と、まあ、これが本書の本筋ではないのですが、このシーンが今回の『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』に繋がっていくので、ぜひ本書もお読みください!

さて、『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』の面白さよりも関連作品の話がメインになりましたが、最後に『バットマン:アンダー・ザ・レッドフード』の魅力を列挙しますね。

●368ページ(3,360円)の超ボリューム!

●収録作品は“BATMAN”#635-641, #645-650, さらに“BATMAN ANNUAL”#25, さらにさらに『バットマン:ハッシュ 完全版』での“彼”の初登場シーンも。もちろん解説も収録! 

●本書の登場人物は豊富でして、バットマン、レッドフードはもちろん、ナイトウィングにアルフレッド、バットマンが認める自警団員オニクス、ゴッサムシティの暗黒街のボスであるブラックマスク、強敵ミスター・フリーズのほかに、スーパーマン、ザターナ、グリーンアロー、デスストローク、キャプテン・ナチなどなどたくさんのキャラクターが登場。

とにかく、原稿を読んでいて、久々にワクワクしながら読んでいました!

ではまた!


(文責:山本将隆)

2013年10月29日火曜日

寄稿「BATMANと音楽」

こんにちは!

久々の記事配信になってしまい申し訳ございません。その分、今回はいつもとは趣向が違った興味深い内容をお届けしたいと思います。

古くから映画やドラマとして映像化され、世界中のファンに親しまれてきたバットマン。もちろん、それらの映像には音楽が欠かせません。そして、音楽の側面からバットマンを読み解いていくと、この世界最高峰のヒーローの新たな側面が見えてくるのでは……?

御寄稿いただいたのは、文化評論家であり、音楽ジャーナリストの川上英雄さん。川上さんはアメコミ研究家としての顔も持ち、多数のコレクションを持つディープなバットマンファンでもあります!
今回はあくまで入門編的な内容ですが、バットマンと音楽にまつわる重厚な物語の片鱗をご堪能ください!!
(※一部の写真の配置等に間違いがありましたため、修正いたしました)



BATMANと音楽 
――凛々しさ溢れるBATMUSICの世界、オリジナル・サウンド・トラックからRAP、DISCO
そしてポップス歌謡まで――


~~BA BA BA BA BATMAN~~と、お馴染みのフレーズで始まる、1966年にフジテレビ系列で放映された、アメリカABC-TV制作の人気テレビドラマ、『バットマン(BATMAN)』のテーマ音楽を読者諸氏はご記憶であろうか。

アダム・ウエスト、バート・ワード主演による同番組は、当時、全米で熱狂的なブームを巻き起こし、記録的な高視聴率を更新。ニール・ヘフティー作曲、巨匠ネルソン・リドル編曲、同楽団による凛々しさ溢れるサスペンス調の楽曲は、我が国でも当時のヒット・チャートを席巻したのだった。(写真①)
写真①
作曲者ニール・ヘフティーよりも著名で、ジャジーな演奏を得意とし、多くのオリジナル・サウンド・トラック(以下、OST)を手掛けていたネルソン・リドルは今日、アメリカン・ポップ・ミュージックの金字塔として、さまざまな功績を残しているが、60年代当時、フランク・シナトラ、ナット・キング・コール、ペギー・リー等、今や伝説の歌手として世界中で語り継がれるアーティストの編曲やレコーディングの指揮を一手に引き受けていた。OSTバージョンはフルートや女性コーラスがジャジーな雰囲気を醸し出しており、さすが貫禄充分な仕上がりぶりだ。また、TV番組の爆発的なヒットで、数多くのカバー曲が録音、発売されたが、ひときわイキのよい演奏をしているのが、「BATMAN THEME」としてシングル・カットされたニール・ヘフティー盤であろう。当時、発売元の日本ビクターからは、OST盤より先行してリリースされたが、エレキギターやハモンドオルガンが独特の音色を放ち、強烈なブラスが絡む、リズム&ブルース風のコンセプトは正に本命盤として人気を博した。
ほのかに漂う緊張感とサスペンス風の味わいは、アダム・ウエスト扮するクールで知的なヒーロー、ブルース・ウェインことバットマンとニューヨークをモデルにしたゴッサムシティの世界を如実に表現している。(写真②)
写真②
写真②の日本版
当時、ドーナッツ盤レコード、と言ってもケイタイ世代の若い読者諸氏にはおわかりいただけないかもしれないが、ビニールレコード盤全盛の音楽市場で、ザ・マーケッツやジャンとディーン、アル・カイオラ、ベンチャーズなどのバンドによる競作盤が多数録音・発売され、しのぎを削っていた。 (写真③)
写真③
特筆すべきは、劇中で、謎の男リドラーを演じたフランク・ゴーシンによるユニークな便乗盤まで登場したことだろう。そうした珍企画盤はマニアのなかでも、知る人ぞ知る存在で、アメリカ国内では高値で取引されていると聞く……。(写真④)
写真④
今日に至るまで、同楽曲は、ロック、シンセサイザー、R&B、ラップ、ディスコなど、様々な変貌を遂げているが、中でも1978年に日本のキングレコードが発売したスピニッジ・パワーによるディスコ盤(写真⑤)や東芝EMIが1989年にリリースしたアキハバラ・エレクトリック・サーカス盤、知る人ぞ知るシーナ&ロケッツ盤にフューチャリングされたり、時代を超えて愛され続けているのには驚かされる。

また、アメリカ本国やヨーロッパでは、黒人ラップによるカバー・バージョンやイタリア製ハイエナジー・カバーなど、インディペンディント系バンドによるリリースも相次ぎ、もはやバットマン音楽=ニール・ヘフティーの楽曲というイメージが定着していることを物語っている。
写真⑤
さて、バットマン音楽のジャンルの中で、2番目に高い認知度を誇っているのが、1989年にワーナーブラザースがティム・バートン監督、マイケル・キートン主演で映画化した『バットマン(BATMAN)』のロック界のカリスマ、プリンスによる一連のサウンド・トラックだろう。
当時の洋楽ポピュラー・シーンを凌駕したプリンスは、その音作りからファションまで、時代をリードする存在であった。そんなロック全盛の時代背景のなか、一世を風靡した「B A T DANCE」など、これまでとは異なるコンセプトは、映画の成功もさることながら、ロック・ミュージック愛好者まで取り込み、世界中に大きなインパクトを与えた。(写真⑥)
写真⑥
マイケル・キートン主演による2作目『バットマン リターンズ(BATMAN RETURNS)』を経て、ジョエル・シューマカー監督に変わり、バル・キルマー主演によってシリーズ3作目を迎えた『バットマン フォーエヴァー(BATMAN FOREVER)』では、世界的に著名なロック・バンドU2が主題歌を担当し、ファンを喜ばせたのも記憶に新しい……(写真⑦)。その後も、プレイボーイ風な容貌で当時のイケメン・スター、ジョージ・クルーニーとクリス・オドネルがタッグを組んだJ・シューマカー監督2作目の『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲(BATMAN & ROBIN)』では、R.KELLY等豪華な一流アーティストが、OSTからシングル・カットした楽曲をヒット・チャートに送り込んでいた。当時、すでにDCコミックスがタイム・ワーナー(ワーナー・ブラザース系列企業)グループであったことそして、世界各国に拠点を築き、音楽市場に多大な影響力を誇ったワーナーミュージックの全盛時代と合致したことも大きなファクターとして指摘することが出来るだろう。
写真⑦
ところで、近年『バットマン ビギンズ(BATMAN BIGINS)』『ダークナイト(DARKKNIGHT)』『ダークナイト ライジング(DARKNKNIGHT RISES)』の3部作が、クリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベイル主演により新たに映画化され、世界の興業史上稀に見ぬ成功を収めたが、配給会社もレジェンダリー・ピクチャーズ(REGENDARY PICTURES)となり、OSTにもさまざまな変化が現れたと筆者は感じて止まないのだが……(写真⑧)。
写真⑧
そもそも、これまでの勧善懲悪な活劇アクション(マイケル・キートン出演作品はやや異なるが?)から、ややシリアスな主人公ブルース・ウェインの心の葛藤や人間的な成長ぶりに趣がおかれたこともあって、音楽監督にハンス・ジマー等現代音楽の巨匠を配し、その重厚な音楽的コンセプトは単なるポップ・ミュージックのカテゴリーから、現代クラシック音楽のジャンルに到達したのではないかと思うほどだ……。
自らの悲しい体験をバネに、体力そして知力を駆使し、最強の敵と渡り合う孤高なヒーロー、バットマンことブルース・ウェインの生き様を、これら3作のOSTは、それぞれのストーリー展開上心憎い役割を果たしており、3つの作品の舞台となる、アメリカ国内のみならず、ブータンやインド、香港などで、青年から存在感あふれる一人の男へと進化して行く主人公の内面を繊細に描写する微妙な役割を担っている。
これまでの単なるアメコミ映画OSTの枠を超えた傑作、ある意味で音楽での「BATMAN伝説」の集大成――と位置付けることができるのではないだろうか。


文化評論家/音楽ジャーナリスト/アメコミ研究家
川上英雄




 
(編集担当:佐藤学)

2013年9月9日月曜日

新刊『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』を語る

こんにちは!

前回の「アメコミ魂」では期待の復刊作品『バットマン:ハッシュ 完全版』をご紹介しました。今回はその『バットマン:ハッシュ 完全版』と同じ発売日である9月28日頃発売予定のデッドプール初邦訳作品『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』について少しだけ語ってみようかと思います。

▲日本語版カバー
ソフトカバー、オールカラー328ページ、定価:2,940円(税込)……アメコミ初心者の方には少々お高く感じるかもしれませんね。とはいえ、表紙の雰囲気やこのブログを見て気に入っていただけたのならば、お買い求めいただいて損はないと思います。アメコミファンからすると、328ページで2,940円!?と、いい意味でいていただいているかもしれませんね。

本書は、とってもお茶目でクールな作品です。いつもの邦訳アメコミとは違って「クスッと笑える」場面も多いですし、気軽に読めちゃう海外マンガです。一応はじめに申しておきますと、今回の作品はデッドプールというキャラクターとゾンビ版デッドプールの頭部(ヘッドプール)との珍道中が描かれてありますので、少しだけ、ほんのちょっとだけ“グロ注意”ということだけお伝えしておきます。驚く度合いは個人差がありますからね。作品内容は違いますが『ウォーキング・デッド』や『キック・アス』を楽しめた人ならまったく問題はないですよ。

『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』の原題は“Deadpool: Merc with a Mouth”です。
“Merc”は“mercenary”の短縮形(スラング)で「傭兵」や「雇い兵」などの意味です。ほかにも「報酬目当てで働く人」などの意味もあります。邦題は原題のカナ表記にしましたが、日本語訳にすると『おしゃべりな傭兵デッドプール』でしょうか。本書では「冗舌な傭兵」と記してあります。

本書は、2009年9月から2010年9月に連載された『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』1号~13号をまとめた単行本で、一つのまとまった物語になっています。連載時のカバーアート(単行本内では各章トビラ)は、パロディの連続で『ジョーズ』やら『プリティ・ウーマン』やらの映画ポスターやニルヴァーナのジャケットなどのパロディで構成されているのも見どころですね(数量限定購入特典ポストカード配布対象書店一覧で一部使用されています)。

さて、「デッドプール」ってホントはよく知らないという方にちょっとご説明を。デッドプールの本名はウェイド・ウィンストン・ウィルソン。マーベル・コミックスのユニバースで活躍する傭兵アンチヒーローです。初登場号は1991年2月の『ニューミュータンツ』98号。誕生してまだ20年ちょっとなんですね。デッドプールをクリエイトしたのは、ライターのファビアン・ニシーザとアーティストのロブ・ライフェルドです(ライフェルドの画は本書でも見れますよ)。デッドプールの誕生秘話にはDCコミックスのデスストロークを意識して…などとありますが、このあたりは本書内にあるボリューム満点の別紙解説書をご覧ください!

デッドプールといえば戦闘能力超回復能力。ダメージを受けてもすぐ治っちゃう。ウルヴァリンをイメージしていただくとわかりやすいと思います。実際に同じ能力ですからね。また、彼は日本に来て相撲部屋に弟子入りしていたこともあり、日本語のほか語学は堪能です。あとは変貌してしまった顔に極度のコンプレックスを抱いているのですが、なぜそうなってしまったのかはこちらも解説書をお読みください(笑)。最大の特徴は、デッドプールは読者に語りかけてしまったり、メタ発言ができる数少ないキャラクターだというところでしょう。ここが彼の魅力であり、読者が彼を「可愛い」「憎めない」「面白い」と思ってしまうところだと思います。

クールなアンチヒーローなんだけど、ユーモアやパロディもあり、愛もある(笑)ヒーロー、デッドプール。ハマる人は絶対ハマってしまう、彼の魅力がいっぱい詰まった本書をぜひご一読くださいね!

ではまた!


(文責:山本将隆)

2013年9月1日日曜日

大解剖『バットマン:ハッシュ 完全版』

こんにちは!

今日から9月ですね。「あ~夏休み終わっちゃった」なんて思っている人も多いはず……。

さて、今回の企画は9月28日頃発売予定の『バットマン:ハッシュ 完全版』を紹介します。同時発売に日本初上陸の『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』や映画原作コミック『R.I.P.D. アール・アイ・ピー・ディー』などがあります。とにかく、どれも注目作ですので、ぜひご贔屓に!

これだけ邦訳コミックが出ていますと、何がいま発売されているかを忘れてしまいますので、念のために8月発売の邦訳アメコミを列挙しておきます。。
『スーパーマン:ラスト・サン』
『ウルヴァリン:エネミー・オブ・ステイト』
『バットマン:梟の夜(THE NEW 52!)』
コミックじゃないけど……これも。
『アート・オブ・アイアンマン3』
あと…アメコミじゃないけどヒーローつながりでこれも……。
『科学忍者隊ガッチャマン アニメアーカイブス』


では、謎の包帯男ハッシュの話をしましょう。

■『BATMAN: HUSH』について
▲『バットマン:ハッシュ完全版』

『BATMAN:HUSH』は、2002~2003年に『BATMAN』誌で12回にわたって連載されたエピソードです。その後、全2巻のTPB(単行本)が刊行(本書を底本としたものが他社さんで邦訳)。2005年には全エピソードに加え、多くの特典ページを収録した『ABSOLUTE BATMAN HUSH』が刊行されました(今月末刊行する『バットマン:ハッシュ 完全版』は本書が底本です)。

また2011年にはジム・リーのペンシル画で構成された『BATMAN:HUSH UNWRAPPED』(『バットマン:ハッシュ 完全版』にも少しだけ特別収録!)も出版されています。



ABSOLUTE版(完全版)は、大判のハードカバーで豪華なケースのついたDCコミックのシリーズで、小社でも『ウォッチメン』や『バットマン:ダークナイト』『キングダム・カム 愛蔵版』などはこのABSOLUTE版を底本としています。


左が『ABSOLUTE BATMAN HUSH』。右はABSOLUTE版を底本とした翻訳版『キングダム・カム愛蔵版』

アメコミの通常の単行本サイズと比較するとこんなにも大きいのがABSOLUTE版。書棚に収まりきれませんね(笑)


▲ハッシュ。モザイクの理由は……
ジム・リー&ジェフ・ローブの『BATMAN:HUSH』は大ヒットを記録するのですが、大ヒットに至るまでの過程などについては、『バットマン:ハッシュ 完全版』に収録されているジム&ジェフによるイントロダクションや日本語版解説をご覧ください!

本書は読みきり作品として成立しており、バットマンのキャラクターやヴィランが多く登場するので、バットマン入門書としても適しています。ちなみに“HUSH”は謎の包帯男の名前なのですが、日本語では「しっ。静かに。黙って」という意味になんですね。読む前に覚えておくといいかもしれませんね。




■『バットマン:ハッシュ 完全版』の収録特典
《その1》ジム&ジェフによるイントロダクション
ジム・リーとジェフ・ローブによるイントロダクションを冒頭に収録。これは本書の底本である『BATMAN HUSH ABSOLUTE』の出版当時(2005年)のインタビューなので、モロネタバレになっています。『ハッシュ』を初めて読む日本の読者は、この項目は本編を読んだ後に読むべきですね。逆に『ハッシュ』をすでに読んだことなある方は、初めから読んでいただいてもいいですし、とても興味深い内容になっています。
▲ネタバレが含まれているイントロダクション(写真は原書版。以下同)

《その2》カバーアート集
全2巻の単行本にもカバーアートは収録されていましたので、もちろん重複する画もあるのですが、こちらの方がアートが豊富ですね。


《その3》ジム・リーによる解説
アーティストによる場面解説。これは贅沢ですね……。写真でいうと右のページになります。日本語版でも12ページにわたって解説されています。


《その4》スケッチ集
これは画を勉強している人やイラストを趣味にしている人には大変参考になりますよね。


《その5》ジム・リーの原画が完成するまで
見開き2ページのみの収録ですが、裏側が見れてとても楽しい!


《その6》修正原稿
完全版だからこそのこの企画、マニア垂涎です!



《その6》商品デザイン
このフィギュア、うちの100名様プレゼントにあったような……。このフィギュアにもちゃんとデザイン画があったんですよね。


《その6》日本語版のみの特別収録『バットマン:ハッシュ アンラップド』の冒頭をほんの少しだけ収録!
日本の読者に喜んでもらえるか分かりませんが、一応、自分のアイデアで入れてみました。本当は全ページ入れたかったのですが、そうなると700ページ近くになってしまうのでやめました(笑)。雰囲気だけでも味わっていいただければ幸いです。
▲これが『~UNWRAPPED』の原書。う~ん、渋い


▲中身はこんな感じ! ジム・リーファンにはたまらないでしょうね……


そのほか下絵やスケッチなどもまだまだ収録されています。もちろん、いつものように日本語版解説と用語解説も収録されています。今回の『バットマン:ハッシュ 完全版』は、完全新訳なので、その点もご注目くださいね!



HUSH!(しっ!)……この記事は誰にも言わないで!……というのは冗談で、買おうかどうか悩んでいる人はこの記事を参考にしてください。最近、アメコミファンになった人には全力でお薦めできる作品です! 最後に、日本語版のケースと表紙のデザインを本邦初公開。なかなかカッコよくできたと思います。ご期待ください。


ではまた!


(文責:山本将隆)

2013年8月18日日曜日

ShoPro Booksのアメコミはいま何作品目?

こんにちは!

8月ももう半ばを過ぎました。今日でお盆休みが終わってしまう会社員さんや夏休みの宿題や課題をそろそろやらないとなと思っている学生さん、または逆に「夏休み」はこれからだー!という方など様々な読者さんにご覧いただいているかと思います。ちなみに猛暑は来週も続くらしいので、熱中症対策はお忘れなく!

今回は、2009年に行った「ShoProアメコミ刊行100冊記念プレゼントキャンペーン」をちょっとだけ振りかえりつつ、衝撃的な発表(!?)をしたいと思います!

その企画は、4年前のことなので覚えてらっしゃる方も多いかと思います。

1994年からアメコミの邦訳コミックをスタートさせた小学館集英社プロダクション(当時「小学館プロダクション」)が2009年に刊行した『DARK KNIGHT バットマン:ダークナイト』をもって邦訳アメコミ100冊目を数えたことを記念したキャンペーン企画でした。
▲『バットマン:ダークナイト』と壽屋さんのフィギュア
内容としては、100冊到達を記念して、読者さんのアメコミにまつわる思い出やアメコミ書評などを添えていただきながら「私が好きなShoProアメコミ」を募集しました。当時は応募フォームをサイト上につくり、募集した記憶があります(もちろん今は終了しています)

そして、応募者の中から抽選で20名様に「100冊記念Tシャツ」をプレゼントいたしました。完全オリジナルTシャツで当初はデザインを色々考えたのですが、結果、バットマンの絵柄のTシャツになりました(『バットマン:ダークナイト』が100冊目なのでいいのですが)。

実は、今まで小社が刊行した邦訳版のカバー写真を並べるデザインや海外版元の枠を超えたデザインなど、もう少し100冊記念っぽいデザインも考えたのですが、時間的にも権利的にも難しかったので断念しました。とはいえ、日本、いや世界で20枚(正確には予備が数枚ございましたが)ですから、たいへん貴重なものですよ。所有されている読者の皆さま、大切に着てくださいね。200冊到達記念のときには、また素晴らしいプレゼントを企画いたしま……

え!? 200作目?

……最近、ものすごい勢いで刊行しているから、200作目ってもうすぐじゃないか……。

……えっと……いま何冊目だっけな?

ということで、数えてみました!

ちょっとその前に、バンド・デシネはどうなっているでしょうか?

01)ルネッサンス (2007)

02) 氷河期 (2010)

03) アンカル (2010)

04) レヴォリュ美術館の地下 (2011)

05) 皺 (2011)

06) ピノキオ (2011)

07) 闇の国々 (2011)

08) 鶏のプラム煮 (2012)

09) サルヴァトール (2012)

10) メタ・バロンの一族 上 (2012)

11) デス・クラブへようこそ (2012)

12) メタ・バロンの一族 下 (2012)

13) 闇の国々Ⅱ (2012)

14) 闇の国々Ⅲ (2013)

15) ラ・ドゥース (2013)

16) 塩素の味 (2013)

▼以降は発売予定作品-------------------------------

17) シェヘラザ―ド~千夜一夜物語 (2013)

18) 闇の国々Ⅳ (2013)

19) フォトグラフ (2013)

20) ローン・スローン (2014)


カステルマン社から刊行された仏アニメのコミカライズ作品『ルネッサンス』を現行のうちのバンド・デシネの流れに入れるかどうかは微妙ですが、ちゃんとしたフランスの出版社から刊行されているので数に入れるとしましょう。そうすると、現在発売中の『塩素の味』で16作目来年には20作品刊行できるという運びにはなりますね。

さて、アメコミに戻りましょうか。2009年刊行の『DARK KNIGHT バットマン:ダークナイト』が100作目ですので、以降から数えてみましょう。ちなみに100作品以内で現在入手できる作品は、96作目の『V フォー・ヴェンデッタ』と98作目『ウォッチメン』になります。ほかは残念ながら絶版扱いになっています。

では、数えてみましょう!

101) バットマン:キリングジョーク 完全版 (2010)

102) アンブレラ・アカデミー (2010)

103) スーパーマン:ザ・ラスト・エピソード (2010)

104) バットマン:ザ・ラスト・エピソード (2010)

105) アイ・アム・アイアンマン (2010)

106) スワンプシング (2010)

107) アーカム・アサイラム 完全版 (2010)

108) ヘルボーイ:壱 (2010)

109) ヘルボーイ:弐 (2010)

110) キングダム・カム 愛蔵版 (2010)

111) キック・アス (2010)

112) ファン・ホーム (2011)

113) バットマン:マッドラブ/ハーレイ&アイビー (2011)

114) ジョーカー (2011)

115) バットマン:ラバーズ&マッドメン (2011)

116) X-MEN:ファーストクラス  明日への架け橋(2011)

117) マイティ・ソー:アスガルドの伝説 (2011)

118) グリーンランタン/グリーンアロー (2011)

119) カウボーイ&エイリアン (2011)

120) キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー (2011)

121) DCスーパーヒーローズ (2011)

122) バットマン:ノエル (2011)

123) WE3 (2012)

124) バットマン・アンド・サン (2012)

125) バットマン:ラーズ・アル・グールの復活 (2012)

126) バットマン:ブラックグローブ (2012)

127) バットマン:R.I.P. (2012)

128) キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ (2012)

129) バットマン VS.ベイン (2012)

130) スパイダーマン:ワン・モア・デイ (2012)

131) アベンジャーズ:プレリュード (2012)

132) スーパーマン:レッド・サン (2012)

133) バットマン:笑う男 (2012)

134) バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー (2012)

135) ヴィクトリアン・アンデット (2012)

136) ベスト・オブ・スパイダーマン (2012)

137) スパイダーマン:ブランニュー・デイ1 (2012)

138) スパイダーマン:ブランニュー・デイ2 (2013)

139) スパイダーマン:ブランニュー・デイ3 (2013)

140) アルティメッツ (2012)

141) ジャスティス・リーグ:誕生 (2012)

142) バットマン:梟の法廷 (2013)

143) ダークナイト:姿なき恐怖 (2013)

144) スーパーマン:アースワン (2013)

145) バットマン:アースワン (2013)

146) JLA:バベルの塔 (2013)

147) JLA:逆転世界 (2013)

148) アイアンマン3:プレリュード (2013)

149) アイアンマン:エンター・ザ・マンダリン (2013)

150) スーパーマン・フォー・オールシーズン (2013)

151) ジャスティス・リーグ:魔性の旅路 (2013)

152) ウォンテッド (2013)

153) ブラックホール (2013)

154) バットマン:梟の街 (2013)

155) マーベルズ (2013)

156) サイボーグ009 USAエディション (2013)

157) スーパーマン:ラスト・サン (2013)

▼以降は発売予定作品-------------------------------

158) ウルヴァリン:エネミー・オブ・ザ・ステイト (2013)

159) バットマン:梟の夜 (2013)

160) バットマン:ハッシュ 完全版 (2013)

161) デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス(仮) (2013)

162) R.I.P.D.(仮) (2013)

163) ロビン:イヤーワン(仮) (2013)

164) スパイダーマン:ニュー・ウェイズ・トゥ・ダイ(仮) (2013)

165) 2ガンズ(仮) (2013)

166) スパイダーマン:エレクション・デイ(仮) (2013)

167) バットマン:ノーマンズ・ランド Vol.1(仮) (2013)

168) バイオレント・ケース(仮) (2013)

169) スパイダーマン:アメリカン・サン(仮) (2013)

170) バットマン&ロビン(仮) (2014)

171) アルティメッツ2(仮) (2014)



現在発売中の『スーパーマン:ラスト・サン』157作目! 現在発表されている作品を数に入れますと……171作品刊行できるという運びにはなりますね……。

結論。来年のどこかで200タイトル到達になりますね。

1994~2009年の約15年間で100作品、2009年~2014年の約5年間で100作品……本当に皆様のおかげであります。今後とも応援よろしくお願いします!


ではまた!


(文責:山本将隆)

2013年7月15日月曜日

寄稿「“オルタナティブコミック”とは何か?」

こんにちは。

このブログでは主にヒーローもののアメコミを中心に扱っているのは以前書いたとおりですが、小社では他のジャンルの本もいろいろと刊行しています。そのなかでも、先日発売したブラック・ホールは、いわゆる“オルタナティブコミック”の傑作と呼ばれる作品なのです。

『ブラック・ホール』はアメリカのコミックですが、通常はアメコミとは呼ばれません。
そこで使われる呼称が“オルタナティブコミック”なのですが、これっていったいどんな意味なのでしょうか? 「オルタナティブ」を辞書で引くと、「二者択一」とか「代替品」などという言葉が出てきます。しかし、具体的にはどんなニュアンスなのでしょうか?

そんな分かりづらーい“オルタナティブコミック”の世界について知るために、『ブラック・ホール』の翻訳を担当していただいた椎名ゆかりさんに寄稿していただきました。ぜひこれを機に、楽しくも奥深い“オルタナティブコミック”の世界に足を踏み入れてください!

それでは椎名さん、お願いします!!



“オルタナティブコミック”とは何か?
先月、当サイトを運営する小学館集英社プロダクションから拙訳によるアメリカのコミックブラック・ホールが出版された。公式サイトに掲載された宣伝文句に「米オルタナティブコミック界の帝王チャールズ・バーンズ、ついに日本上陸!」とあるように、本作はチャールズ・バーンズの初邦訳だ。
▲『ブラックホール』日本語版
チャールズ・バーンズはデビュー当初から、アート・スピーゲルマン主宰のコミックス雑誌『RAW』で続けて作品を発表し、その作家性が注目されてきた。アート・スピーゲルマンは、“オルタナティブコミック”を代表する作家であり、コミックスとしてのみならず一般の小説と並んでその芸術性が高く評価される『マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』(邦訳・晶文社、1991年)の作者である。更にバーンズは高級文芸誌『The New Yorker』でイラストを発表するなど、イラストレーターとしての評価も高い。
▲『RAW』
▲『MAUS』
実際にチャールズ・バーンズはアメリカの“オルタナティブコミック”を語る際には必ず名前のあがる作家のひとりであり、『ブラック・ホール』は“オルタナティブコミック”の傑作と言われている。

しかし、ここまで読んできて「“オルタナティブコミック”って何だろう?」と思った人は少なくないのではないか。“オルタナティブ”という言葉のイメージと『ブラック・ホール』の表紙や解説を見て、「なんとなくわかるような気もするけれど、実際のところ“オルタナティブコミック”って何なの?」と思った方のために、当コラムではアメリカにおける“オルタナティブコミック”とは何かについて書いてみようと思う。

例えば『ミュータント・ニンジャ・タートルズ』(原題 Teenage Mutant Ninja Turtles 以下『TMNT』)という作品をご存じだろうか。
▲Teenage Mutant Ninja Turtles
『TMNT』は、4匹の亀が謎の物質を浴びたことで人間化し、同じく人間化したネズミを師匠に忍術を学び様々な敵と戦う物語である。実写映画、劇場アニメーション、TVアニメーション、TVゲーム、おもちゃ等々、メディアミックスも成功し、現在アメリカでは3度目のアニメ化作品が放映中。典型的なスーパーヒーロー像からは若干ズレているものの、擬人化した亀の主人公たちがヒーローとして活躍する人気作だ。

メジャーなプロパティと言える『TMNT』だが、原作は既存の作品のパロディ色を強く打ち出して1984年に始まった白黒のコミックであり、“オルタナティブコミック”と呼ばれることもある作品である。『TMNT』の原作が“オルタナティブコミック”と聞くと違和感を持つ人が多くいるかもしれない。大規模なメディアミックスも行われ、亀とは言えスーパーパワーを持ったティーンエイジャーが主人公の、子供に人気がある作品と聞けば、“オルタナティブ”のイメージとは真逆と感じる人もいるだろう。
▲コミック版『Teenage Mutant Ninja Turtles』
この『TMNT』や『ブラック・ホール』のように、一見まったく違う方向性を持った作品が同じように“オルタナティブコミック”と呼ばれることからもわかるように、“オルタナティブコミック”はわかりづらく、それが何かを説明するのは実は凄く難しい。

近年よく聞く“バンド・デシネ”という言葉と比べてみると、そのわかりづらさがよく伝わるのではないか。はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド(玄光社MOOK、2013年)では、“バンド・デシネ”について以下のように説明している。「フランス語圏のマンガです。ベルギーやスイス、ヨーロッパ近隣、最近ではアジアの作家もいます」(p18)。つまり“バンド・デシネ”とはフランス語圏で出版されるマンガの総称である。

しかし“オルタナティブコミック”は“バンド・デシネ”と違って総称ではなく、ある一群の作品を示すジャンルを表す言葉である。(仮にここでは、アメリカのマンガの総称を“コミックス”と呼ぶことにする。)コミックスに限らず何においても、ひとつのジャンルにどの作品が含まれて、どの作品が含まれないかを語るのは難しいが、特に“オルタナティブコミック”の場合、特定の題材、流通の形態、制作のされ方等を指しているわけではないことも、余計にその言葉をわかりづらくしている。

そのわかりづらさのひとつに、もともと“オルタナティブコミック”が「特定の何か」を指す言葉としてではなく、「特定の何かでないもの」を指すために使われ始めたことも原因としてあるかもしれない。“オルタナティブ”(=もうひとつのもの、代わりの、等)という言葉の示す通り、“オルタナティブコミック”とは“メインストリーム”、つまり既に存在するコミックスの“主流”に対して、“主流ではない”作品を示そうとして使われ始めたのである。

身も蓋も無い言い方をすれば、“オルタナティブコミック”とは何かについて厳密に語ろうとすると、「“メインストリーム”と呼ばれる作品以外のコミックスのこと」ぐらいしか言えなくなってしまう。しかし、そうすると今度は「コミックスの“メインストリーム”とは、どういう作品群のことか」も説明する必要が出てくる。しかもややこしいことに、“メインストリーム”と見なされる作品も実は、状況や文脈によって異なるのである。

とはいえ、絶対に“オルタナティブコミック”とは呼ばれない(=メインストリーム)作品群は存在するので、逆説的にそこから“オルタナティブコミック”について把握することは可能だろう。その作品群とはふたつあり、1つ目は新聞の全国紙に連載しているコミックストリップ、2つ目は大手コミックス出版社DCとマーベルから出ているスーパーヒーロー作品である。つまり、これ以外はすべて“オルタナティブコミック”と呼ばれる可能性があり、場合によっては実際にそう呼ばれている。

映画・マンガ批評家の小野耕世氏が、著作アメリカン・コミックス大全(晶文社、2005年)の中で「アメリカの物語マンガ出版の分野」として、以下の三つの分類を行っている(P17)。

① 1世紀以上の歴史をもつ新聞連載マンガ(newspaper strip)


② スーパーヒーローものを中心とするコミックブック出版のメインストリーム (main stream comics)
③ マンガ家が個人で出したり小さな出版社(比較的大きなものも)から出ているオルタナティヴ・コミックス(alternative comics)

小野氏の分類は非常に簡潔で、とても分かり易い。ただし「新聞連載マンガ」でも、掲載されている新聞が全国紙の場合は“メインストリーム”とみなされるが、全国紙ではなく「オルタナティブ・ニュースペーパー」(いわゆるミニコミ誌のようなものから、大学新聞や地方紙なども含む)というタイプのものである場合は、連載コミックスを“オルタナティブコミック”と呼ぶこともある。

更に上の②で取り上げられている「コミックブック出版のメインストリーム」では、コミックブックがスーパーヒーローを扱っていたとしても大手2社(DCとマーベル)以外から出ている場合は“オルタナティブコミック”と呼ばれることがあるので注意が必要だ。しかも大手2社から出ていても扱っている題材によっては“オルタナティブコミック”と呼ばれることもある。作者オリジナルの作品が多い大手DC社のVertigoレーベル作品を“オルタナティブコミック”と見る人は多い。

最後の③の「個人で出したり小さな出版社から出ている」作品に限っては、すべて“オルタナティブコミック”と言っても大丈夫に思われるが、実は「小さな出版社」から出ていても「GIジョー」などの他メディアの有名プロパティのコミカライズ作品が“オルタナティブコミック”と呼ばれることはほとんどない。

このように見ていくと“オルタナティブコミック”がわかりづらく、説明するのが難しい言葉であることをわかっていただけると思うが、それでもぼんやりと“オルタナティブコミック”が示す作品群のイメージはつかめてきたのではないだろうか。

そこで、ある程度の誤解や漏れが生じることを承知で、敢えて“オルタナティブコミック”を以下のように定義してみることにする。

「全国紙に連載されているコミックストリップではなく、大手コミックス出版社DCやマーベルから出ているスーパーヒーローものでもない、作者オリジナルのコミックスのこと。一般に作家性の強い文学的作品を指す場合が多いとも考えられるが、出版形態によってはエンターテイメント性の高い作品も含まれる。」
個人的には、アメリカのコミックスの多様性を理解する上で“オルタナティブコミック”という言葉のわかりづらさを知ることはとても重要だと思っている。このわかりづらさ、即ち多様性もアメリカのコミックスの魅力の一部なのだから。

椎名ゆかり





※「オルタナティブコミック」の日本語表記は「オルタナティブ・コミック」であったり、「オルタナティブ・コミックス」であったりするが、この記事では、「オルタナティブコミック」に統一する。
(編集:佐藤学